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特集●急性膵炎診療の新常識 Vol.2
注目される膵局所動注療法

膵局所動注療法を開発した国立病院機構仙台医療センター臨床研究部長の武田和憲氏

 重症急性膵炎は、膵組織が壊死し、その組織に感染が生じることで死亡リスクが高まる。そのため、この膵壊死と感染の予防が重要だ。

 膵壊死の予防に有効として期待されているのが、国内で開発された膵局所動注療法だ。これは、蛋白分解酵素阻害薬ナファモスタット、商品名:フサン)と抗菌薬イミペネム・シラスタチン配合剤、商品名:チエナム)を、大腿動脈から挿入したカテーテルを用いて膵臓に直接投与する方法だ。薬剤の移行性が低い膵組織に、効率的に薬剤を投与できる。

 この治療法を開発した国立病院機構仙台医療センター臨床研究部長の武田和憲氏は、「動物実験により、静注に比べて局所動注で膵組織内の薬剤濃度が約5倍に高まることを確認している」という。また、これまでのケーススタディによる臨床研究の結果、膵局所動注療法により、致死率、感染性膵壊死の発症率ともに有意に減少することが確認されている。動注療法を受けない場合、致死率、感染性膵壊死ともに約4割程度となる一方で、動注療法を受けた患者では致死率は8.8%、感染性膵壊死の発症率は9.8%になっていた。

 また、使用する薬剤の効果について武田氏は、「蛋白分解酵素阻害薬は、一昔前までは膵組織の分解を予防すると考えられていた。しかし、現在では、その主な効果は抗凝固作用にあることが明らかになっている」と説明する。重症急性膵炎では、膵組織内に血栓が生じやすくなり、血栓に起因する虚血状態から膵壊死へと進展する。蛋白分解酵素阻害薬には、この血栓を予防する働きがあるのだ。

 また膵炎に伴う疼痛にも効果があるという。「局所動注療法を行うと、疼痛が短時間に取れる」と武田氏は語る。詳細なメカニズムは不明だが、動注療法開始後2日目には、ほとんどの患者で鎮痛薬が不要になるという。

 この膵局所動注療法は、専門家の間では既に認知されているが、これまでにエビデンスレベルの高い研究結果が報告されていなかった。そのため、日本腹部救急医学会などがまとめた『急性膵炎診療ガイドライン2010[第3版]』(2009)では、局所動注療法は「死亡率および感染性膵合併症の頻度を低下させる可能性がある」と記載されてはいるものの、「科学的根拠は少ないが、行うことを考慮してもよい」というレベル(推奨度:C1)に留まっていた。

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