vol.1で紹介したインパクトファクター以外にも、学術研究を評価するための指標の開発が相次いでいる。背景には1990年代以降、研究者や研究機関を評価し、その結果を処遇や研究費の配分などに用いる傾向が強まっていることがある。
トムソン・ロイター社の「Journal Citation Reports」は2009年から、米国ワシントン大学生物学部門のカール・T・ベルグストローム氏らによって開発されたアイゲンファクター(Eigenfactor)という新しい指標を採用した。インパクトファクターと異なるのは、インパクトファクターでは数値を算出する上でどの雑誌も同等に扱うのに対し、アイゲンファクターはそうでない点だ。
「重要な学術雑誌から頻繁に引用されている学術雑誌は重要である」との考えに基づき、独自のアルゴリズムで雑誌に重み付けをして、雑誌の影響力を数値化する(Bergstrom C. C&RL News2007;68(5).)。この方法をウェブサイトのランク付けに応用したのがグーグルだ。
アイゲンファクターのウェブサイトには、それぞれの雑誌のアイゲンファクターの値が公開されている。試しに「MEDICINE」の「2006年」で検索すると935誌あり、09年5月29日現在でアイゲンファクター値が最も高かったのはNew England Journal of Medicineで0.7183、次いでCirculation(0.54769)、Lancet(0.5002)、JAMA(0.45493)、Journal of Clinical Oncology(0.28292)と続いていた。
一方、世界有数の学術出版社であるエルゼビア社の学術文献情報データベースである「Scopus」が採用したのはh指数(h-index)。これは、トムソン・ロイター社の「Web of Science」でも採用している。h指数は米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校物理学部門のジョージ・E・ハーシュ氏が提唱した指標で、ある研究者が発表した論文のうち、「h回以上引用された論文がh本以上ある」ことを意味する(Hirsch JE. Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:16569-72.)。
h指数の求め方は比較的単純だ。ある研究者の発表した論文の数を横軸にして、被引用回数の多い順に左から右に並べた上で、縦軸をそれぞれの論文の被引用回数としてグラフを描く。そこに、原点を通る右45度の直線を引くと、グラフとの交点がhとなる(図)。
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