
「新しい放射線増感剤を使った治療法は、全国にあるリニアックの力を最大限に生かすことができる」と話す、高知大の小川恭弘氏。
癌だけに高線量を当てる技術の進歩は著しく、粒子線治療など患者が選べるメニューもそろってきた。だが、依然として日本における放射線治療の主流は、従来型のリニアックによるX線照射。照射技術を進歩させるのではなく、放射線増感剤を新たに開発することで、このリニアックの治療効果を最大限に高めようとしているのが、高知大放射線科教授の小川恭弘氏だ。
X線を照射するリニアックの弱点は、酸素濃度が低い、腫瘍内部やある特定の癌種に対して効果が弱まること。X線の効果はおおむね3分の1が直接的なDNA傷害によるものだが、残りの3分の2は水分子を分解してラジカル(不対電子を持つ分子や原子)を形成することによる間接的な傷害で成り立っている。ラジカルの固定に酸素が必要なことから、酸素濃度が低いとX線照射の効果が直接的なDNA傷害だけに限定されてしまう。