日経メディカルのロゴ画像

本誌連動◇癌治療の最先端 Vol.2
外科治療(その2) 術前化学療法で完全切除を目指す

「90年代は手術ありきだった。今は、いきなりの無理な手術は避け、安全に効率よく手術を行えるようになってきた」と話す国立がんセンター中央病院の井垣弘康氏。

 ここ数年、手術前に行う化学療法が、根治切除率を上げるための方法としても注目されている。その一例が食道癌。08年の米国臨床腫瘍学会総会では、日本国内の胸部食道癌患者(扁平上皮癌:臨床病期2~3)において、術後化学療法の有用性が確立されている5-FU+シスプラチンのレジメンを、術前に行う群と術後に行う群を比較した第III相試験が発表された。

 手術での完全切除率は術前化学療法群は95%だったのに対し、術後化療群は91%。術前化療群では腫瘍縮小効果によってダウンステージングできた症例が多く、5年生存率も60.1%と、術後化療群の38.4%に比べて有意に高かった。「この結果から、当院では胸部食道癌患者の化学療法は術前に行うようにした。コンセンサスができ、今後は化学療法は術前にシフトしていくのではないか」。国立がんセンター中央病院食道外科医長の井垣弘康氏はこう話す。

 胸部食道癌においては、10年ほど前から、手術単独よりも術後に化学療法を追加すると再発予防効果が得られることが分かっていた。「だが、開胸と開腹が必要な侵襲の大きい術式のため、術後合併症などで抗癌剤投与ができないことが結構あった」と井垣氏。上述の臨床試験でも、術前化療群で90%が化学療法を完遂できたのに対し、術後化療群では28%の患者が、術後合併症や本人の拒否で完遂できなかった。

 こうした術前化学療法の流れは、手術が集学的治療の1つと位置づけられている欧米では、ずいぶん前から進んできた。食道癌は現在、術前化学放射線療法が標準だ。直腸癌でも術前化学放射線療法はほぼ標準。欧米では切除不能な大腸癌肝転移でも、化学療法後に手術に持ち込める症例が増えてきている。

この記事を読んでいる人におすすめ