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本誌連動○診療ガイドラインに関する意識調査2008《Vol.3》
ガイドラインは医療訴訟に悪用される?

 日経メディカル オンラインの医師会員を対象に行った「診療ガイドラインに関する意識調査2008」(調査の概要はVol.1「診療ガイドラインの満足度は48.2%」参照)では、あえて2002年調査と同じ設問にして、意識の変化を見た。

 診療ガイドラインに対する不満に関して、2002年調査と今回調査を比較してみよう(表1)。

 2002年調査より順位が下がった、つまり不満が解消されていたのは「EBMの手法に基づいていない」という点だった。臨床上の疑問に関するエビデンスを系統的に検索し、多方面から検討した上で推奨を決めるという、診療ガイドラインの作成手法についての理解が多少なりとも進んできたことがうかがえる。

 逆に、2002年調査より順位を上げた、つまり不満が増していたのは「医療訴訟に悪用される恐れがある」という点だった。2002年調査の第10位から6位に上がった。「ガイドラインがすべての患者に当てはまるとは限らない。最も危惧するのは、ガイドライン通りに治療をしないと裁判で敗訴することがあり得るということである。ガイドラインを作成する際は、訴訟などに使用してはならないなど、一筆付け加える必要がある」(50歳代、内科、診療所開業医)、「一部の事例で、医師がガイドラインに沿わない医療行為を行った結果、叱責されたケースがある。結果的に、萎縮医療につながりかねないと思う」(30歳代、内科、大学病院勤務医)といった声も寄せられた。

 弁護士の鵜飼万貴子氏は、日経メディカル オンラインの連載『ケースに学ぶトラブル対策講座』「ガイドラインは本当に医師を守ってくれるのか?」で、「ガイドラインから外れた治療をした場合、裁判官が『原則として過失あり』という心証を持つ可能性が十分あります」と指摘している。その心証を覆すためには、「実際の医療現場ではガイドラインでは割り切れない具体的・個別的な事情もあることを、裁判官に分かりやすい形で再現し、客観的にも正しいと分かってもらわなくてはいけません」とも述べている。

 本来、診療ガイドラインは推奨(recommendation)を示したものであって、全員に適用しなければならない規則(regulation)ではないのだが、現状ではそうした医療界の理解が、法曹界に共有されていない面がある。患者に良い医療を提供するために作られているはずの診療ガイドラインが、かえって医師を萎縮させてしまうようなことになれば、いったい何のための診療ガイドラインか、ということになってしまう。

 診療ガイドラインの守備範囲や限界について、医療従事者の間だけでなく、社会的なコンセンサスづくりが求められるだろう。

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