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シリーズ◎日経メディカル事故調セミナーリポート〈3〉
「医療事故調査で第一に向き合うべきは患者・家族」
日本赤十字社事業局技監・矢野真氏

セミナーで講演する日本赤十字社事業局技監の矢野真氏

 日本赤十字社事業局技監の矢野真氏は、「医療事故が起きたときに第一に向き合うべきは患者・家族であることを忘れてはらない。きちんと医療事故調査を行うことは、患者・家族に向き合うことを手助けしてくれる」と強調した。これまで院内事故調査に積極的に取り組んできた立場から、全国に92ある赤十字病院で発生した医療事故の報告を受けてきた矢野氏が登壇し、具体的な院内調査の手法や注意点を解説した。

 医療事故調査制度を巡っては、2015年5月に厚生労働省が省令・通知を示したが、具体的な手法などは各病院団体がその後にガイドラインを作成している。矢野氏は、「法律のあり方を主眼に置いたガイドラインがある一方で、医療事故調査のあるべき姿を示しているガイドラインなど様々なものがあり、混乱が生じている。現場の医療者から日本赤十字社の方針を示してほしいという要望があった」と振り返った。
 
 日本赤十字社は患者・遺族への「真実説明」と「謝罪」を原則にした「医療事故・紛争対応ガイドライン」を2010年に作成している。医療事故調査制度スタートを機に、現場の医療者が「医療法上の医療事故」をどのように把握し、病院としてどのように医療事故調査制度のプロセスを踏んでいくかだけでなく、日常の報告・連絡・相談などのあり方、患者説明や同意の方法、調査の方法、医療事故調査委員会のあり方、原因分析や再発防止、適切な評価の方法などを見直すべきという。


全国各地の医療事故調査をサポート
 日本赤十字本社は、1975年に全国各地の赤十字病院で起きた医療事故を検証する「日本赤十字社医療事故検討会(旧医療紛争打ち合わせ会)」を設置。当初は医師賠償責任保険への対応が目的だったが、現在では医療事故の評価を行い、患者・家族への対応方法を助言している。月1回開催し、平均20件ほどの医療事故を取り扱ってきた。構成メンバーは医師9人、看護師2人、弁護士2人、損害保険会社の職員1人、事務職員2人だ。矢野氏によると、同じ日本赤十字社に所属する施設であっても、身内意識から判断を甘くすることもなく徹底した「第三者評価」を心掛けているという。

 評価は、以下のように進む。まず医療事故が発生した病院から診療記録や検査結果、画像、事故調査報告書などを受け取る。その後、提出物を基に、適応・説明同意、診療内容、急変時の対応、事故対応などの妥当性を検証する。最終的には日本赤十字社が報告書を作成し、患者・家族への対応方針の助言とともに病院へ返している。矢野氏はこれまでに取り扱った事例の一部を紹介した上で、「当該病院の事故調査を日本赤十字社本社が支援することで、各病院が示す見解よりも、さらに客観性な評価を示すことができる。患者・家族に調査結果に納得していただける可能性が高まるのではないか」と話した。

 矢野氏は新制度に対する患者・家族側の不安として、「病院管理者の判断で医療事故調査を行うか否かが決まるため、調査が適切に行われないのではないかという危惧」を挙げる。新制度の対象になる死亡事故でなくとも、必要に応じて調査をしっかり行うことが重要だと強調した。矢野氏は院内調査を行う対象は、国立大学病院医療安全管理協議会が定める影響度レベル3b(「一過性の高度な傷害で濃厚な処置や治療を要する」)以上の医療事故が妥当だと話した。

 矢野氏は院内調査を行う際の注意点として、(1)診療録や検査結果などを基に事実を客観的に確認すること、(2)当事者からの聴き取りは事実と区別すること、(3)問題点を初めから限定せずに全てのプロセスを検証すること、(4)医療事故が発生した根本原因を時系列で分析するRCA法などを用いて網羅的に原因分析と再発防止策を検討すること――などを挙げた。

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