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リポート◎アルコール患者に介入する様々な仕掛け
「アルコール救急」の負担を軽減!四日市の秘策

三重県立総合医療センターの伊藤秀樹氏は「アルコール依存症は本人のみならず家族も非常に困っているケースが多い。専門治療への道筋をつけることを心掛けている」と話す。

 ある日の昼、三重県立総合医療センター(四日市市)の救命救急センターに60歳代の男性患者が救急車で運ばれて来た。付き添ってきた妻によると、患者はベッドの前に倒れて周囲が血だらけになっていた。意識レベルはJCS(Japan Coma Scale)1で、意識は大体清明だが今一つはっきりしない状態だ。患者本人によると、朝10時ごろに焼酎をコップ1杯飲み、トイレから風呂に行く途中で転んだという。

 血中アルコール濃度は132mg/dL。焼酎1合なら血中アルコール濃度は50mg/dL程度でなければ辻褄が合わない。朝から飲み始めて採血までに数時間しか経っていないとすると、焼酎3合以上は飲んでいるはずだと救命救急センター次長の伊藤秀樹氏は推測した。「朝から3合以上飲んでいるとなると、基本的にはアルコール依存症だと考えられる」と伊藤氏は話す。

 詳しい状況を患者の妻に聞くと、酒を飲ませないと本人が怒って暴れるから、仕方なく「1合だけ」と言いながら朝から飲ませているのだと打ち明けた。そのような状況について「困っていませんか」と伊藤氏は尋ねた。患者の妻は「大変困っているが、どうしようもないのであきらめている」とのこと。

 伊藤氏は、検査データを見せながら、患者はアルコール依存症の疑いがあること、依存症は脳の病気であり、本人は自分の意志で飲酒をやめられないこと、病死だけでなく事故死、自殺のリスクも高いことなどを説明した。ただ、きちんとした治療法があり、アルコール依存症の専門外来で治療を受ければ飲酒をやめられるかもしれないと、専門外来への受診を強く勧めた。

 当初はあきらめから「いいです」と断っていた患者の妻も、伊藤氏の勧めに気持ちが変わり、「ぜひ専門外来を紹介してください」と積極的になった。その返答を受けて、伊藤氏はアルコール専門外来を持つ、かすみがうらクリニック(四日市市)副院長の猪野亜朗氏に紹介状(表1)を書き、本人をいかに受診させるかをクリニックと電話で相談、予約を取った上で受診するよう伝えた――。

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