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ケーススタディ◎松下こどもクリニック(大阪府門真市)
短時間でワクチンをミスなく接種する秘策
受付時から次回接種予約まで、医師・看護師が徹底管理

松下こどもクリニックの松下享氏

 「今日は姉妹揃ってワクチン接種ですね。ではお母さん、まずお姉ちゃんに接種するワクチンから確認していきましょう。お姉ちゃんのワクチンは…」。保護者と医師が話していると、先に接種するはずの姉が「やっぱり私、先に注射するのやめる。後がいい」と言い出し、どたんばで妹が先に打つことに。しかし、医師の手元に用意されていたのは姉用のワクチン。直前に姉妹が入れ替わったことに気付かなかった医師は、妹に姉用のワクチンを打ってしまった――。

 妹への接種後に、間違いに気付いた松下こどもクリニック(大阪府門真市)院長の松下享氏。たまたま接種したワクチンが1~2カ月後に接種すべきものだったことから、保護者には予定していたワクチンではなかったことをまず謝罪。接種が推奨される時期の範囲内であるため問題はなく、健康被害はないと考えられると伝えた。その後、念のため定期的に経過を観察していたが、健康被害は起きなかった。

 他にも「今井さん」を診察室に呼んだところ、「今木さん」が入室。保護者と母子手帳を確認し、気付く――といった事態もあった。同じようなミスやヒヤリハット事例に心当たりのある医師は多いのではないだろうか。

 現在、看護師4人、受付4人、医師1人という体制で午後1時半から2時半までの週1回のワクチン外来で、35~40人の患者に対し、80~90本のワクチンを接種しているという松下氏。ミスを防ぐ取り組みが上手く回るまではヒヤリハット事例が数回あったものの、この4~5年はそれもなくうまく回っているという。そんな松下氏に、ミスなくクリニックで予防接種を行う秘訣を聞いた。

開業後、患者が増えてきた頃に注意
 「正直、大学病院に勤めている頃は予防接種に関わっておらず、開業してしばらく経った頃は私自身もスタッフも慣れていない状態で予防接種に取り組んでいた。あってはいけないことではあるが、クリニックに来院する患者数が増えるに連れ、ミスが起こりやすくなり、ヒヤリとする事例を3~4回経験した」と松下氏。

 小児における定期の予防接種は、乳幼児期に接種が集中している上、ワクチンによって接種間隔や回数が異なることから接種時のミスは起こりやすいとされている。実際に昨年1年間では、予防接種時に生じた事故は全国で4596件。このうち血液感染を起こし得る事例は6件あったと報告されている。

 松下氏は冒頭の接種ミスを教訓に、改めてクリニックをあげて接種ミスを減らすための取り組みを徹底し始めた。「本来であれば、時間に余裕を持って患者を診て接種すべきだが、クリニックで患者数が増えてくるとそれはなかなか難しい。1人1~2分で確認して接種しようとすると、どうしてもミスが起こりやすくなる。そこで、様々な学会で報告された接種ミスの予防策を取り入れ、看護師を中心にクリニック全体で接種時のミス防止に取り組み始めた」と松下氏は言う。

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