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リポート◎研究コンセプトは注目を集めるも…
論文捏造の認定で足場を失ったSTAP細胞の行方

 「論文を読んで、酸処理という弱い刺激で細胞が多分化能を獲得するというコンセプトはあり得るなと思った」──。国立研究機関で幹細胞の研究を手掛けるある研究者は、1月30日、Nature誌に掲載されたマウスのSTAP(stimulus-triggered acquisition of pluripotency:刺激惹起性多能性獲得)細胞の論文を読んだ感想についてこう振り返る。

 論文の内容を要約するとこうだ。一度分化した、リンパ球などの細胞を、pH5.7の弱酸性溶液で25分処理すると、一部の細胞に多能性マーカーを発現するなど変化が見られた。マウスへの移植実験などで、この細胞が三胚葉のいずれもを形成する多能性を持つと判明。また、ある程度育った受精卵(胚盤胞)に細胞を注入すると正常なマウスが誕生し、注入細胞が、胎盤などマウスの様々な組織を形成することも確認された。弱い刺激を与えて多能性が得られたことから、この細胞はSTAP細胞と命名された。

“ホットスポット”突いた論文
 冒頭の研究者のように発表時、STAP細胞の論文に関心を寄せた研究者は少なくない。それは、無名の若い女性研究者が割烹着を着て成果を出したからではなく、論文が幹細胞研究の“ホットスポット”を突く内容だったからだ。

 時計の針が前にしか進まないように、これまで幹細胞は細胞分裂を重ねながら一方向に分化するだけだと考えられてきた。しかし、数種類の遺伝子導入で受精卵に近い多能性を持ったiPS細胞が樹立できることが発見されて以降、分化した細胞の時計の針を巻き戻すメカニズムの研究が活発化。また、試験管内では幹細胞の中に、時間の流れに逆らって分化に抵抗する幹細胞も存在することが分かってきた。国立大のある研究者は「細胞が分化したりしなかったりする状態を調べるのに、細胞を取り巻く環境が鍵になる可能性もある。酸処理で細胞が多能性を獲得するという今回の論文には注目していた」と明かす。

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