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トレンドビュー◎広がる「DNARの誤解」
DNARの指示、きちんと伝わっていますか?
「癌患者」か「非癌の高齢患者」かで解釈に差も

 今年1月、関西地方のある中核病院に心不全の急性増悪で80歳代後半の男性患者が入院した。ほぼ寝たきりの男性患者はこれまで何度も入退院を繰り返し、認知症も患っていた。患者を何年も診てきた主治医は、家族への病状説明と合わせて念のため、心停止や呼吸停止を起こした際の対応を確認。「心肺停止しても心肺蘇生は望まない」との家族の意思を確認し、カルテに「DNAR」と書き込んだ。

 数日後、患者は誤嚥性肺炎を発症。夜間で主治医がいなかったことから当直の別の診療科の医師が診察に当たった。その際、カルテのDNARとの記載を見て、抗菌薬投与を含めた通常行われる全ての治療は望んでいないと解釈し、抗菌薬の投与を差し控えた。主治医は翌日になって治療が行われていないことを知り、あわてて抗菌薬の投与を指示。患者は誤嚥性肺炎を乗り切って退院した――。

 「こういうトラブルは日常茶飯事」とこの主治医はこぼす。カルテに書かれているDNARの意味を誤って解釈し、心肺停止時の心肺蘇生だけでなく通常の治療をも控えてしまうといったこのような事例が、高齢患者の増加を背景に散見されるようになっている。

1990年代から国内でも普及
 DNAR(do not attempt resuscitate)とは、患者や家族の希望に基づき、心肺停止となった場合でも心肺蘇生(cardio-pulmonary resuscitation:CPR)を実施しないことを医療者間で共有する指示のこと。

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