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日経メディカル2012年12月号「キーワード」(転載)
豚由来変異型インフルエンザ
米国で感染急増も大流行は可能性低い

 今年の夏以降、米国で小児を中心に豚由来の変異型インフルエンザA型ウイルス(A/H3N2v)への感染事例が急増している。11月17日時点の感染者数は、11州で計307人に上り、8月に60歳代の女性が死亡した。

 A/H3N2vは、1995~97年ごろに流行していた季節性ウイルスA/H3N2が北米の豚に感染し、豚の中でさらに鳥、豚インフルエンザウイルスと遺伝子3重再集合を起こした変異ウイルス。さらに、2009年にパンデミック(世界的大流行)を起こしたA/H1N1pdm09からM遺伝子を取り込んだことによりヒトへの感染力が増し、11~12年にヒトの感染事例が急増したと考えられている。

 感染者の大半は、農業見本市などで豚と接触して感染した。ヒトからヒトへの伝播は、今のところ家族内での濃厚接触に限られている。特徴的なのは、感染者の大半が小児である点だ。A/H3N2vに対する抗体保有状況を調べた米疾病対策センター(CDC)の報告によれば、10歳以上の年齢層はA/H3N2vに交叉反応する抗体を持っていた。国立感染症研究所が日本人の血清を用いて行った調査でも、同じ結果だった。

 その理由について、同研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室長の小田切孝人氏は、「A/H3N2vの抗原性は95~97年にヒトで流行した季節性ウイルスA/H3N2の抗原性を持っている。そのため、当時生まれていた人は既に感染しており、抗体を保有しているものと考えられる」と説明する。今後ヒトの間で感染が広がったとしても10歳未満の小児での流行が中心となるため、「09年のようなパンデミックを起こすには至らないだろう」(小田切氏)。

 CDCによる遺伝子解析の結果によると、A/H3N2vは低病原性で感染しても季節性インフルエンザと同程度の症状か、それより若干軽い症状で済むという。治療は、抗インフルエンザ薬のアマンタジンには耐性だが、ノイラミニダーゼ阻害薬4剤には感受性を示す。ただし、米国での死亡例や入院例は基礎疾患を持っていたことから、心疾患や喘息、肥満などの疾患を持つ人や妊婦などは重症化する可能性がある。

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