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日経メディカル2012年11月号「この人に聞く」(転載)
ケニア・ナイロビに常駐して熱帯医学の研究拠点を率いる
一瀬 休生氏(長崎大熱帯医学研究所ケニア拠点長)

2012/11/30
聞き手:橋本宗明=日経バイオテク

いちのせよしお氏 1952年生まれ。79年長崎大卒。長崎大熱帯医学研究所で細菌性下痢症を研究。2003年長崎県西彼保健所所長、06年長崎大熱帯医学研究所ケニア拠点特任教授、10年熱帯医学研究所教授、同ケニア拠点長に就任。
photo:久野武志

 長崎大熱帯医学研究所(熱研)のケニア拠点の特任教授として2006年4月からナイロビに常駐し始め、10年7月からは2代目のケニア拠点長を務めています。

 学生時代は産婦人科医を目指していました。未熟児や新生児の医療を行う上では感染症が重要だろうと考え、研修修了後、熱研の大学院に入って細菌感染の研究をすることにしました。大学院が終わる頃にJICA(国際協力機構)のプロジェクトに参加したことが、私がケニアに関わるようになったきっかけです。

 長崎大は1960年代、ケニアの公立病院に医師や看護師などを派遣する医療協力を開始しました。79年にJICAが国立のケニア中央医学研究所(KEMRI)を支援するプロジェクトを始めてからはこれに参画し、感染症対策に関わる調査研究などを行ってきました。

 ただ、JICAへの協力では、技術移転など、本来の研究とは違う活動もやらなければなりません。科学研究費補助金を使えばアフリカに研究に行けますが、2~3年単位の予算だったりして継続の保証はありません。本来は熱研が自主予算を持って、継続的に研究を進めるべきです。そんな中で05年、ナイロビにあるKEMRI構内に、熱研の海外教育研究拠点の開設が決まりました。

 実は私はこの2年前、50歳の時に熱研を離れて長崎県の職員として保健所長を務めていました。そこへ、初代のケニア拠点長の嶋田雅曉教授から、「長崎大が目指してきた海外拠点をやっと作れることになった。手を貸してくれ」と言われました。最初は断っていたのですが、請われたのだから引き受けるべきだろうと思い直し、決断しました。

 これまでにケニア拠点で主に取り組んできたのは、1つはマラリアの流行地域であるビクトリア湖岸のMbita、インド洋沿岸のKwaleという地域での人口静態・動態調査システム(DSS)の立ち上げです。両方とも人口5万人ぐらいの地域で、現地スタッフを雇って民家を定期的に1軒1軒回ってもらい、誕生や死亡、疾病などの情報をPDA(携帯情報端末)で報告してもらうものです。ケニアには戸籍が存在しないので、公衆衛生的な介入研究の効果を測るためにも基礎データの作成から取り組まなければなりません。

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