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日経メディカル2012年7月号「この人に聞く」(転載)
「地域医療の再興」実現のため、先頭に立って行動していく
横倉 義武氏(日本医師会会長)

よこくら よしたけ氏
1969年久留米大卒。西ドイツ・ミュンスター大デトモルト病院外科、久留米大講師などを経て、90年医療法人弘恵会ヨコクラ病院院長、97年理事長。2006年福岡県医師会会長、10年日本医師会副会長、12年4月より現職。
写真:秋元 忍

 4月1日に日本医師会の会長に就任しました。会長選挙への立候補表明以来、一貫して訴えてきたのは「地域医療の再興」です。地域医療を守り、充実させるにはどうすればいいのか。各地域の実情を細かくくみ上げて、それを国政に反映させるため、先頭に立って行動していきたいと考えています。

 ただ、現状をどう変えていくのかといえば、これは非常に難しい。例えば医師の偏在の問題。地方の病院が疲弊しているといわれますが、そこでは開業医の先生たちも減っています。だからといって強制的に配置するわけにはいきませんから、打開策をみんなで考える必要があります。

 国の政策によって結果的にここ十数年、医師の都市部への集中が進んできましたから、それをまず転換すべきです。人口が500人の地域でもちゃんとした医療が継続できるように、診療報酬や税制も含めて検討する。昔、それぞれの地域には国民健康保険組合の直営診療所がありました。その形態の是非は別にしても、過疎地域には、自治体が設置して運営を医師に任せるタイプの医療機関が必要ではないかと思います。

 また、最近は大学医学部の地域枠を目指す学生が増えていますので、その卒業生に地域で頑張ってもらえる環境を整備することも喫緊の課題です。医学部の新設を求める意見もありますが、地域の医師需給のバランスを崩す新たな要因にもなりかねません。そこは既存の大学の定員増で対応すべきでしょう。

 一方、地域医療の崩壊は都会でも起きつつあります。医療への財源投入が十分でないために、地価や人件費が高い地域での医療の継続が難しくなっているのです。こうした問題を解決するため、病院の構造設備や人員配置の基準を、地域の実情に応じて柔軟に運用できるようにしてほしいと考えています。

 今の医療法は、病院の廊下幅から配置すべき医療従事者の数まで、全国一律に細かく規定しています。でも、地価が高い東京ではそれだけの廊下幅を確保することが難しいし、地方では努力しても十分な医療体制が組めないことがあります。国は医療安全を担保できるだけの大枠を規定するにとどめ、細かな点は各地域の実情に任せてもらいたいと主張しているわけです。

 それと、できるだけ早く手を付けたいと思っているのが、医療事故調査制度への対応です。厚生労働省の検討会が動き出したようですが、日医の委員会では意見の集約がある程度できました。これを基に各地域の医師会の意見を聞いて、それを政治の舞台に乗せ、早急に法制化につなげたいと考えています。

 今、外科系の医師が減少している背景には、やはり業務上過失致死傷罪の問題があります。善意で行った医療が刑事罰に問われることがない仕組みづくりを進めないと、結局は国民が不幸になってしまいます。

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