――日本蘇生協議会(JRC)と日本救急医療財団は昨年10月19日、「JRC(日本版)ガイドライン2010(以下、GL2010)」のドラフト版を公表した。5年ぶりに救急蘇生のガイドラインが変更される。
岡田 GL2010は、国際蘇生連絡委員会(ILCOR)のConsensus on Science with Treatment Recommendations(CoSTR)2010に基づいてJRCと日本救急医療財団が作成した日本版の新しい救急蘇生のガイドラインだ。CoSTRは、5年に1度改訂される救急蘇生の国際的なコンセンサス。CoSTR2010は、CoSTR 2005以降に蓄積されたエビデンスに基づいて改訂された。
――GL2010の医療従事者・救急隊員などにおける1次救命処置(BLS)の主な変更点を教えてほしい。
岡田 最大のポイントは、胸骨圧迫の重要性が非常に大きくなったことだ。まず胸骨圧迫から心肺蘇生(CPR)を開始するように流れが変わった。さらに必ずしも、脈拍を確認する必要がなくなり、いち早く胸骨圧迫を始めることの大切さが強調された。
もともと医療従事者であっても、脈の判断は簡単ではなく、今改定で必須ではなくなった。「脈をみられるか不安だ」という医療従事者は、まず気道を確保して呼吸の有無だけを確認し、呼吸がなければ心停止と考えて、すぐに胸骨圧迫を始めればよい。
――日本などから発信されたエビデンスにより、心停止後の心拍再開には、胸骨圧迫により冠灌流圧を一定以上に維持することや、毎分100回近くの速さで連続して圧迫することなどが重要であると分かってきた(関連記事:2010.7.13「小児には人工呼吸も重要」)。さらに近年、市民が行う人工呼吸+胸骨圧迫(従来法)と胸骨圧迫のみの心肺蘇生を比べる大規模試験の結果が続々と発表され、胸骨圧迫のみでも、神経学的予後で従来法と同等の効果があると示唆された。
岡田 そうしたエビデンスに基づいて、今回の変更で胸骨圧迫が前面に押し出され、CPRは「(人工呼吸ではなく)胸骨圧迫から行う」「人工呼吸ができない状況では胸骨圧迫のみを行う」などといった文言が加わった。欧米のガイドラインでも同様だ。医療従事者は人工呼吸も習得しておくべきというスタンスは従来と同じだが、質の高い胸骨圧迫を優先することの重要性がより強調された。
図 医療従事者、救急隊員などにおけるBLSの手順(青字は今回削除された内容、赤字は今回新たに盛り込まれた内容)
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