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日経メディカル2010年8月号「この人に聞く」(転載)
家庭医・総合医を目指す若手に研鑚と教育の場をつくる
前沢 政次(日本プライマリ・ケア連合学会理事長)

まえざわ まさじ氏
1947年茨城県生まれ。71年新潟大卒。自治医大地域医療学助教授、宮城県涌谷町町民医療福祉センター所長などを経て、96年北大病院総合診療部教授。2010年より倶知安厚生病院総合診療科医師。

 今年4月、プライマリケア領域の3つの学会(日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会)が合併して日本プライマリ・ケア連合学会が誕生しました。会員数は約6000人となり、6月の第1回学術大会では、われわれ年配者が肩身の狭い思いをするくらい、若いパワーが目立っていました。

 連合学会の大きな目的は、家庭医・病院総合医を日本の医療システムの中にしっかり根付かせることです。認定制度も確立して、具体的な医師像や実践モデルを広めたいと考えています。合併に至るまでには様々な紆余曲折がありましたが、3学会がそれぞれの生い立ちや理念、会員層といった小異を捨てて一つになったことで、共通の目的に向かって動き出す基盤ができました。

 これまで、家庭医・病院総合医は、医療界で確固とした専門領域として認められてきませんでした。特に大学の医師たちにとっては、学生や研修医に教育を行う必要性は理解しつつも、医学研究分野や新たな診療科としては認めがたいものでした。私も北大病院の総合診療科にいたときに、大学内でその存在意義を認めてもらうのに随分苦労しました。

 一方、開業医の先生方からすると「プライマリケアは自分たちが既に実践しているのに、なぜ改めて資格を作らないといけないのか」といった思いがあるようです。制度化すると包括払いや人頭払いなどの医療費抑制策に使われる、といった懸念を示される先生もおられます。

 しかしながら、高齢化や医師不足を背景に、患者を総合的に継続的に診ることができる医師の必要性が、地域において急速に高まっています。3学会は、バラバラにそうした医師を育成する活動をしていましたが、規模が小さく、社会への影響力は低いものでした。また、似通った組織が複数あるため、プライマリケアを専門的に学びたいと思った若い医師が、どの学会に所属すればよいか分からないという問題もありました。

 今回の合併は、そういった様々な課題を解決するための打開策でもありました。きっかけは2007年、日本医師会の生涯教育制度見直しの際に、3学会の担当者も参加して総合医の認定カリキュラム策定に向けて議論していたことです。結局、認定制度については日医の会員の先生方からの反対が多く、3学会だけで進めることになりましたが、その議論の過程で、3学会が目指しているものは同じだという共通認識が生まれ、合併を敢行したのです。

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