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日経メディカル2009年12月号「この人に聞く」(転載)
国保は都道府県単位での一元化を
山田啓二(京都府知事)

2009/12/10

やまだ けいじ氏●1954年兵庫県生まれ。東大法学部卒。旧自治省(現総務省)入省。京都府副知事などを経て2002年から京都府知事。現在、全国知事会地方分権推進特別委員会委員長。

 私はかねてから、国民健康保険の置かれた状況を問題視してきました。今年1月に「国保の都道府県単位での一元化を検討すべき」と提案したときは、知事会でも賛成はほとんどありませんでした。しかし、政権も代わり、国も後期高齢者医療制度を含め、医療保険制度を根本から見直そうという動きが出てきたことで、一元化に関心を持つ県も出てきたのはうれしいことです。

 そもそも都道府県単位での一元化を提言するに至った理由は、市町村の運営する国保の状況が大きく変化する中、限界に来てしまっているからです。国保はかつては農業者や自営業者が加入する保険でした。しかし今は高齢化が進み、無職者が5割を超えています。

 農業と自営を中心に、地域に密着した保健医療を市町村で展開しようというのが国保の目的でした。しかし今では、生活保護に次いで弱い立場にいる無職者や派遣など、会社の保険に入れない人々のナショナルミニマム(政府が国民に対して保障する最低限の生活水準)をどう維持するかという深刻な問題を抱えている。

 ナショナルミニマムは国が責任を持つべき部分ですが、それを市町村が負わなければならない。変化に制度が対応しきれていないのです。

 市町村の中には、国保の赤字を一般会計からの繰り入れで穴埋めしているところもありますが、ほとんどの市町村は財政赤字に悩み破綻寸前です。当然、そうした国保の保険料は高くなる。医療保険というナショナルミニマムを、地域の事情で格差を付けていいのでしょうか。

 一方で、できる限り地域に権限を渡そうという「地方分権」の動きがあるのですが、地方分権は本来、ナショナルミニマムを踏まえながら地域の裁量を利かせていくものでしょう。すべてを地方に任せてしまったらナショナルミニマムでも何でもなく、歪んだローカルオプティマム(住民選択に基づく地域ごとの最適基準)になってしまいます。

 ナショナルミニマムとローカルオプティマムを混同してしまったのが、この10年、20年の厚生行政だったといえます。

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