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原告側実質勝訴も、「真相分からず」と控訴を表明
患者が焼身自殺した医療訴訟で注目の判決

弁護士と記者会見に臨む原告の冨田将史氏(右)

 2006年10月に、医療事故で病院を訴えていた患者が、被告病院の前で焼身自殺した事件があった。その民事訴訟の判決が2008年10月20日、水戸地裁土浦支部で下された。中野信也裁判長は、病院側の過失を認め、慰謝料や逸失利益など総額約1370万円の支払いを病院側に命じた。

 実質的には原告側の勝訴といえる判決だったが、原告側は記者会見で「医師の責任があいまいになったままの判決であり、納得できない」と語り、控訴する方針を明らかにした。提訴した本人が訴訟の途中で焼身自殺するという衝撃的な経過をたどった訴訟は、8年にわたる審判を経ても、原告側の不満や不信感を取り除くには至らなかった。

腹腔鏡手術で腸管穿孔
 この裁判は、原告が財団法人「筑波メディカルセンター」と担当医ら3人を相手取り、約3500万円の損害賠償を求めていたもの。事件の経緯は2006年に本サイトでも報じたが(関連記事参照)、改めて簡単に振り返る。

 原告の冨田善弘氏(故人)は1999年6月、直腸癌の治療のため、筑波メディカルセンターで腹腔鏡下腸切除術を受けた。その直後、冨田氏は腸管穿孔による腹膜炎を発症し、敗血症や播種性血管内血液凝固症候群(DIC)に陥るなどで長期の入院を余儀なくされ、その後頻繁に便意を催す後遺症が固定した。

 冨田氏は2000年6月、これら術後の腸管穿孔とそれに続いて発生した腹膜炎や後遺症などが、経験が未熟な(腹腔鏡下腸切除術について助手として2例、術者として1例。ただし他の腹腔鏡下手術の経験は多数あり)医師による手術時の過失によるものだとして、病院と執刀医などを相手取り、逸失利益や慰謝料など総額約4400万円の損害賠償の支払いを求めて提訴した(その後請求額を約3500万円に変更)。

 病院側は、冨田氏の腸管穿孔は合併症であり避けることができなかったと過失を否定し、全面的に争った。裁判で争う中で、冨田氏は病院側の対応や裁判所、弁護士などの対応に不満や失望を感じ、2006年10月に病院に抗議する目的で病院前で焼身自殺した。このため、冨田氏の遺族が継承して争っていたのが今回の裁判だ。

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