
細見氏が開業していた神戸市内のショッピングモール
「保険医登録を取り消して勤務医としての道も閉ざすことはあまりに酷である」――。
診療報酬の不正請求を理由に保険医登録の取り消し処分を受けた眼科医、細見雅美氏が起こした裁判で、神戸地裁は4月22日、取り消し処分を違法とする判決を下した。同様の裁判で医師が勝ったのは、今回が初めて。裁判所が「あまりに酷」と断じた処分とは、いったいどのようなものだったのか。
開業からわずか3年で保険取り消しに
細見氏は、神戸市内のショッピングモールで2001年、ほそみ眼科を開業した。医院経営が軌道に乗った開業3年目の04年、細見氏は兵庫社会保険事務局の個別指導、監査を受ける。96件、約68万円の不正、不当請求が確認できたとして、同事務局はほそみ眼科の保険医療機関指定と細見氏の保険医登録を取り消す処分を下した。
保険を取り消されると、原則5年間は再指定、再登録を受けられない。細見氏は保険医療機関指定と保険医登録の両方の処分取り消しを求めて裁判を起こした。だが、自由診療だけでは経営が成り立たず、医院を廃止。保険医療機関指定の訴えを取り下げ、保険医登録の処分取り消しに絞って裁判を続けてきた。
取り消しの理由となった行為は、処方せん料の不正請求、無診察処方など幾つかある。処方せん料について社会保険事務局は、実際には処方していない人工涙液マイティア(商品名)を処方したかのように装って、処方せん料を不正請求したとした。
マイティアを処方していないのに保険請求したことは、細見氏も認めている。だが厳密に言うと、細見氏は、実はマイティアではなく、同じ人工涙液のソフトサンティア(商品名)を使用していながら、マイティアを処方したことにしていたのだ。
細見氏は、防腐剤が添加されていないことにメリットを感じ、ソフトサンティアを使用していたが、ソフトサンティアは一般用医薬品なので自費扱いとなる。細見氏は、院内で無償交付するなどしてきたが、無償交付が重なった結果、マイティアを処方したことにして処方せん料を請求し、無償交付したソフトサンティアの購入費用に充てたとしている。