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普及するか、感染症の迅速検査 《前編》
続々と登場する感染症迅速検査

2008/04/14
増田 智子=バイオ部

「患者の『知りたい』という要求が強くなれば、決め手となる治療薬がない疾患でも迅速診断をするようになるなるだろう」と語る原土井病院の池松秀之氏。

 「迅速検査の導入によって、診断から治療のフローが変わった」-。原土井病院(福岡市東区)臨床研究部部長の池松秀之氏は振り返る。池松氏がいう迅速検査は、全国の医療機関で使われるようになったインフルエンザ迅速診断キットのことだ。池松氏は、日本臨床内科医会インフルエンザ研究班で、インフルエンザの迅速診断キットを日常診療に適用するためにはどんな工夫が必要かを検討してきた。

 「臨床の現場で、ワクチン接種率の向上、抗インフルエンザ薬の使用と並んで、迅速検査キットがインフルエンザの感染制御に寄与している」(池松氏)。実際、池松氏が勤務する原土井病院ではインフルエンザの早期診断が可能になり、高齢者がインフルエンザに感染した際の肺炎合併率が下がっているという。インフルエンザに感染していることが明らかになれば、患者が重症化しても、迅速に対応できる。

「迅速検査」の意義を知らしめたインフルエンザ
 現在では、インフルエンザ流行期の日常診療で欠かせない存在となったインフルエンザの迅速診断キット。だが、そう簡単に定着したわけではない。「抗インフルエンザ薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)とリレンザ(商品名:ザナビビル)が2001年2月に保険適用になる前は、診断に対する要求はそれほど強くなかった」(池松氏)。新薬の登場が重なったことが、簡便で結果が速やかに得られる迅速検査の意義を世に知らしめることになった。

 検査を実施する医師の習熟、検体採取器具の改良などで、感度は年々向上しており、医師の信頼も得られるようになってきた。また、日本臨床内科医会などが、実際に迅速診断キットを使用して得られたデータを広く収集し、その情報を発信したことも、普及を後押しした。「インフルエンザウイルス量が少ない発症初期では偽陰性が出やすいことや、検体を採取する最適な方法などが広く知られるようになるまでには、2、3シーズンを必要とした」(池松氏)。さらに、インフルエンザウイルスA型とB型では、A型の方がより検出しやすいこと、B型が検出されにくいのはウイルス量が少ないためである可能性など、実際に使用した医師から集まったデータを分析して明らかになってきた知見は多い。

 では、インフルエンザに続き、広く日常診療に使われる迅速検査はあるのだろうか。多くの企業から多数の製品が発売されている迅速検査には、インフルエンザのほか、A群溶血性レンサ球菌溶連菌)、アデノウイルスなどだが、その他にも原因微生物やウイルスを臨床現場で迅速に検出するキットは続々と登場してきている。現在、一般に使用可能な感染症の主な迅速診断項目をまとめた(次ページ表1)。

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