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【日経メディカル10月号特集連動企画◆医師を襲うトンデモ医療裁判Vol.1】
トンデモ判決に4つのタイプ
医師の気力を削ぐようなトンデモ判決が、なぜ生まれるのか

 人は過ちを犯す──。それは、医師も裁判官も同じだ。ところが、医師は裁かれて過失を認められる一方、裁判官が過ちをとがめられることは、あまりない。

 医療裁判の提訴が年間約1000件にも上る昨今、医療者側から見て明らかにおかしいと感じる判決が目に付くようになっている。その中身を読み解けば、トンデモない事実認定や注意義務を理由に、医療者側が敗訴していることにがく然とする。

「あのときこうしていれば、患者を救えたはず」──。“後出しジャンケン”で裁く裁判官からは、厳しい言葉が浴びせられる。だがこのような判決を下す裁判官は果たして、医療の持つ特殊性を理解しているのだろうか。医療には限界がある。不確実性がある。教科書通りにはなかなかいかない。後から検証すれば、最善の方法などたやすく見付かるものだ。だからといって、その治療法や処置を選択したことを責められてはたまらない。にもかかわらず、そのような責めを平然としてくる。そんな判決を、多くの医師や弁護士が「トンデモ判決」と呼んでいる。

 もちろん、医師側敗訴の判決がすべてトンデモ判決だというわけではない。医療関係者の大方が納得するような判決も少なくないだろう。しかし、明らかにおかしく受け入れがたい判決も、確かに存在するのだ。

トンデモ判決の4タイプとは
 トンデモ判決にはどのようなものがあるのか。今回本誌では、トンデモ判決の特徴を理解しやすくするため、大きく4つのタイプに分類してみた。その4つとは、「最高水準要求型」「説明義務過剰型」「因果関係こじつけ型」「医学的根拠希薄型」だ。

 「最高水準要求型」は、医師や病院に要求する医療水準があまりにも高い判決で、「医師は全員ゴッドハンドであるべし」というに等しい判決のことを指す。救急や産婦人科など、ハイリスクな診療科で頻発しており、トンデモ判決の中でも最も多いタイプといえそうだ。

 「説明義務過剰型」は、医療側に求める説明義務の範囲があまりにも広すぎるタイプの判決だ。最高水準要求型と並んで多いタイプといえるだろう。説明義務違反は、今や医療訴訟で必ずといっていいほど争点にされる。医療者側に明確な過失がない場合でも、裁判所が患者救済を考慮して何らかの損害賠償を認めるために、その口実に使われているように取れる判決が少なくない。それどころか、争点となった医療行為とは関係のない部分の説明義務違反を指摘して、慰謝料を認めるような判決もある。

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