日経メディカルのロゴ画像

連載●変わる「慢性疲労症候群」の診断指針《上》
「原因不明の疲労」の診断が容易に

図1 6カ月以上持続する原因不明の全身倦怠感を訴える患者に対する診断の指針 (日本疲労学会が学術集会で発表した資料を基に編集部が作成)

 6月30日に開催された日本疲労学会で、慢性疲労症候群CFS:chronic fatigue syndrome)の新しい診断指針が発表された。慢性疲労症候群は原因不明の強い疲労が6カ月以上にわたって持続する疾患だ。これまで使用されてきたわが国の診断基準は、1992年に策定されたもので、15年ぶりの改定となる。来春、学会誌に掲載され、正式発表となる見込みだ。

 変更点は大きく2つ。1つは除外すべき疾患、経過観察すべき疾患(病態)、併存を認める疾患を明確に示したこと。もう1つは「特発性慢性疲労」という概念を新しく取り入れたことだ。

 ちなみに今回、「診断基準」ではなく「診断指針」となったのは、当初予定していた確定診断のための数値基準を盛り込めなかったため。研究が進み、数値基準を盛り込めるようになった段階で再度改定を行い、診断基準に格上げする計画だという(詳細は、本連載の日本疲労学会理事長のインタビューを参照)。

うつ病は並存疾患として認める
 慢性疲労症候群は、疲労症状が「原因不明」であることが前提となっている。したがって診断においては、原因が明らかなものを除外する必要がある。

 今回の新指針で示された除外疾患は、大きく8つ(図1の1)。これらの疾患がある場合には、慢性疲労の原因がその疾患に起因する可能性が高いと考え、慢性疲労症候群とは診断しない。92年の診断基準でも除外疾患や条件は既定されていたが、表現があいまいな部分も多く、今回の改定により除外疾患の鑑別が容易になっている。

 また、経過観察するのは、アレルギー薬や睡眠薬など倦怠感をもたらし得る薬剤を長期服用している患者と、肥満の患者(図1の2上)。これらの患者は、服薬中止もしくは肥満の改善を見るまで、判断を保留することとなった。

 うつ病の扱いも大きく変わった。これまでの診断基準では「心身症、神経症、反応性うつ病などは慢性疲労症候群発症に先行して発症した症例は除外するが、同時または後に発現した例は除外しない」とされている。新診断指針ではこの規定が削除され、発症時期の判定は不要になった。具体的には、双極性障害と精神病性うつ病は除外するが、心身症、神経症、反応性うつ病などは発症の時期にかかわらず、慢性疲労症候群との並存を認めることになる。

 もう一つの特徴である「特発性慢性疲労」(ICF:idiopathic chronic fatigue)という疾患概念の新設。指針に完全には合致しないため、慢性疲労症候群という診断は付けられないが、疲労の原因が分からないものをいう。これまでの診断基準で「疑診例」と呼ばれていたものだ。

 今回の改定により、従来の疑診例をICFに読み替える必要があるほか、これまで疑診例とされていた患者が慢性疲労症候群とされたり、慢性疲労症候群と診断されていた患者がICFとされるケースもあると見られ、現場に多少の混乱が生じる可能性がある。だが、今回の診断指針は、ICFという概念も含め、米国が1994年に発表した診断基準を日本向けにアレンジしたもの。国際的に通用する診断基準を取り入れたことで、例えば、海外で治療に関する有用な知見が得られた際に、日本にも迅速に導入しやすいなど、メリットも大きそうだ。

この記事を読んでいる人におすすめ