
図1 横浜市立大病院が企画した心臓カテーテル検査の説明用の絵本 安全ベルトなど医療用具はリアルに描かれている。
横浜市立大病院小児科では、昨年7月から、看護師が企画した「絵本」を使って、心臓カテーテル検査についての説明を行っている。
そこに描かれたキャラクターは、子供なら誰でも知っているネコの「ノンタン」。絵本作家のキヨノサチコ氏と、ノンタンシリーズの絵本を発行している出版社の偕成社(東京都新宿区)の協力によって、この書き下ろしの絵本『けんさ がんばるもん』(写真)が実現した。
この数年、こうしたツールを使って、小児患者に検査や治療の説明をする医療機関が増えている。従来は保護者に向けた一般的な説明を隣りに座らせて聞かせる程度の施設が大半だったが、最近になって、幼児であっても本人にきちんと説明すれば、治療や検査の意味や手順を理解し、その後の治療にも前向きに取り組んでくれる子供が多いことが分かってきたからだ。こうした動きは欧米が先行しており、これをプレパレーション(preparation:「準備」の意)と読んでいる。
そうしたプレパレーションで注意すべきは、患児の年齢や発達度に合わせて説明すること。それによって、理解度に大きな差が出るからだ。具体的には、人形や絵本、写真、模型などのツールを、発達度に応じて選択する。ノンタンの『けんさ がんばるもん』のような絵本は、幼児から小学校低学年の子供向き。この絵本では、主人公のノンタンが心臓のカテーテル検査のために入院し、検査を受けるまでの様子が6ページで描かれている。
作者に頼んで医療機器もリアルに
一般的に、絵本は、医療機関における子供への説明に使いやすいため、同様の取り組みは全国的に行われている。だが、実際に作家の協力を得て、ノンタンのような有名なキャラクターを登場させる本格的な絵本が作られるのは、非常にまれ。そんな“大作”が実現したのは、横浜市大病院の小児科スタッフの熱意によるものが大きかったようだ。