日経メディカルのロゴ画像

「私に落ち度はない、精一杯やった」
福島・大野病院事件の第7回公判が開催

検察:「冒頭陳述の際、患者さんを死亡させたことについて忸怩(じくじ)たる思いがあると話したが、結果について落ち度があると考えているのか。『あの時、あれをやれば良かった』と思うことがあるのか」
加藤医師:「特にありません。精一杯のことをやりました。だからこそ、その結果にすごく悔しい思いをしています」

検察:「(事件)当時の知識や経験で足りなかったことはあるのか」
加藤医師:「医師は日々勉強していくものであり、そういう意味ではもっと勉強しようという思いはあります」

検察:「癒着胎盤を疑い、MRIをやっておくべきだった、癒着胎盤の知識・認識が不足していた、医局に応援医師を頼んでおくべきだった、という思いはあるのか」
加藤医師:「ありません」

検察:「(胎盤剥離の際)、用手剥離にクーパーを併用したことは問題だったと思うか」
加藤医師:「思いません」

検察:「あなた自身、自分の知識、手技、判断に落ち度があったと思うか」
加藤医師:「特に落ち度はありません」

 これは、8月31日に開催された福島県立大野病院事件の第7回公判の終盤に行われた、検察側と被告である加藤克彦医師とのやり取りだ。この日の公判は被告人尋問で、9時30分に開始し、途中昼食の休憩などを挟んで、19時までという長丁場だったが、加藤医師は終始冷静に、言葉を選びならが尋問に答えていた。

1日9時間に及んだ取り調べ
 この日は被告人尋問が行われるとあって、15人の一般傍聴券を求めて121人が並んだ。逮捕から起訴に至る取り調べの段階で、本人の供述通りに調書が作成されたとは必ずしもいえないこと、胎盤剥離にクーパーを使った妥当性をはじめ起訴事実に疑問符が投げかけられたことが、今回の公判のポイントだといえよう。なお、公判は通常、主尋問(この日は弁護側)、反対尋問(検察側)、再主尋問(弁護側)という流れで進むが、この日は検察側の反対尋問が長時間にわたり、再主尋問は次回以降に延期された。

 最初に尋問を行った弁護側はまず、逮捕から起訴までの拘留期間の取り調べについて尋問した。加藤医師が逮捕されたのは、2006年2月18日、起訴は3月10日だ。その間の取り調べは、1日7~9時間に及んだという。留置場から検察庁まで往復約2時間の道のりも含めると、ほとんど自由な時間はなかった。「逮捕ということで、変な緊張があり、頭がぼおっとして何が事実か分からなくなることもあった」(加藤医師)。留置場に戻っても、医学書はなく、物事を考える時間的余裕もなかったという。

「あなたは殺人者だ」と検察に言われた
 そんな状況でまとめられた調書は、加藤医師の主張がそのまま記載されないこともあった。例えば、本事案は、子宮と胎盤を剥離する際にクーパーを使ったことが大量出血につながり、妊婦の死亡原因となったとされている。

この記事を読んでいる人におすすめ