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福島・大野病院事件の第6回公判が開催
注目の鑑定人・産婦人科教授が証人に

福島地裁に入る被告の加藤克彦医師(手前)と弁護人の平岩敬一氏。

 福島県立大野病院事件の第6回公判が7月20日開かれ、現時点で予定されている最後の検察側証人の、ある大学の産婦人科教授への尋問が行われた。この医師は検察の起訴の重要な根拠になった鑑定書を書いており、その証言が注目されたが、特筆すべき点はあまりなく、検察側、弁護側のどちらに有利ともいえない内容だった。

 「医師の判断の妥当性」という微妙な問題について刑事裁判で裁く難しさが、改めてクローズアップされた――。敢えて言えば、これがこの日の公判だったといえよう(事件の概要などは、「福島・大野病院事件の初公判、被告は無罪主張」「医師が刑事裁判の被告になったとき」を参照)。

一人の鑑定人への尋問で5時間強
 この日の公判も、第5回公判と同様に証人は一人。午前は10時から12時半前まで、午後は1時半から途中15分の休憩をはさんで4時半まで行われた。
 
 証人の産婦人科教授が、大野病院の地元の富岡警察署の依頼を受けて鑑定書を書いたのは2005年夏ごろのことだ。鑑定を依頼された理由について、「これまで鑑定書を書いた経験は7件あり、その中には立派な鑑定書がある、と警察から言われた」と説明した。今回の事件では死亡原因や帝王切開手術時の手技の妥当性などが鑑定事項であり、(1)死亡原因は心室細動による心停止であり、帝王切開時の胎盤剥離により大量出血し、循環不全に陥ったことが心室細動の原因である、(2)術前の超音波検査で、癒着胎盤を疑うことができた、(3)輸血など術前事前の準備も不十分、(4)術中に癒着胎盤を認めたら、無理に剥離をせず、子宮摘出に切り替えるべきだった--などと記載されていた。そのほとんどが、本事件の被告である加藤克彦医師の過失を認める内容だ。

 この日の公判で、検察側に有利に働いた点は、この鑑定書が裁判の証拠として採用されたことだ。弁護側も病理や周産期医療の専門家など計3人に鑑定を依頼していたが、検察分も含めて鑑定書はこれまで証拠として一切採用されていなかった。今日の産婦人科教授への証人尋問で、この鑑定書の真正性が認められ、証拠として認められた。

 また本鑑定書は、本事件の病理鑑定も参考にして書かれた(「病理の鑑定結果の信ぴょう性に疑問符」)。しかし、前回の第5回公判では、病理医が鑑定とは異なる内容の証言をするなど、鑑定結果に疑問を呈せられる形となった。それでも、この日の公判で産婦人科教授は、「死亡原因は変わらない」と証言した。

鑑定書の表記を22カ所も訂正
 もっとも、産婦人科教授の鑑定には、問題も少なからずある。まず表記の問題だ。日付や時間のミス、DIC(播種性血管内凝固症候群)のフルスペルの記載ミスのほか、「剥離」と書くべきところを「胎盤」としたり、「子宮筋層」を「子宮筋腫」と書くなど、誤記が22カ所あり、この日の公判で訂正した。

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