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「マイクロソフトが医療情報を標準化」で大騒動
報道に学会や業界団体が激怒、MSは火消しに奔走

 マイクロソフト(MS)は7月11日、医療現場におけるIT(情報技術)化の推進を目指す「Connected Health Platform構想」(以下、CHP構想)を発表した。

 同社が英国などで既に展開しているこの構想は、具体的には、(1)院内の業務アプリケーション(電子カルテ、オーダリング、レセプトシステムなど)の連携を実現する、(2)個人認証システムなどのセキュリティーシステムを構築する、(3)システム利用者に、WordやExcelなどの使い慣れたユーザーインターフェースを提供する――という3本柱からなっている。

 この発表を受けて同日、一部マスコミが「マイクロソフトは国内の医療情報システムの標準化に乗り出した」と報道。これが、今回の“騒動”の発端となった。

 そもそも、医療情報を各種システム間でやり取りするための規約としては、「HL7」が世界標準として認知されている。日本でも1998年に、日本医療情報学会と、業界団体である保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の主要メンバーが発起人となって「日本HL7協会」が組織され、今も改良が続けられているHL7を日本語化したり、日本固有の仕様を組み込むといった作業を進めている。ちなみに、マイクロソフトも、104社ある日本HL7協会の事業法人会員のうちの1社である。

 こうした歴史的な経緯があったため、日本医療情報学会や日本HL7協会は、今回のマイクロソフトの動きに「HL7を無視するつもりか!」と気色ばんだ。

 日本医療情報学会会長で東大大学院情報学環准教授の山本隆一氏は、「今回の報道をきっかけに、『マイクロソフトが新たに標準化を進め、安価なシステムの提供を考えている』という誤解が広がり、システム投資を控える医療機関が出始めていると聞く。また、これまで産官学が連携して推進してきた標準化が危機に瀕しているという誤解も生まれている」と問題視する。日本医療情報学会としては、こうした問題への真剣な対応をマイクロソフトに求めていきたい考えだ。

 学会以上に対応に苦慮しているのが、医療情報の標準化の先頭に立ってきた日本HL7協会。同協会のWebサイトには、マイクロソフトの常務の署名入りで書かれた釈明文をいち早く掲示している。だが同協会としては、これだけにとどまらず、マイクロソフトに対して報道した新聞社への抗議や、クレームがあった際の相談窓口の設置など、具体的な措置を求めていくという。

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