日経メディカルのロゴ画像

【日経ヘルスケア7月号●診療所経営相談室より】
水道光熱費を削減してコストを抑えたい
「調達改善」「運用改善」「設備改善」で取り組む

2007/07/08
日経ヘルスケア

【質問】
 診療報酬の度重なる引き下げで、ここ数年、収益が伸び悩んでいます。人件費の削減は最後の手段と考えていますので、水道光熱費などのコストをどうにか抑えたいのですが、どこから手をつければよいのかわかりません。(内科、50歳)

【回答】
 トイレや空調に潜む無駄を排除
(回答者:村井哲之=(株)コスト削減総合研究所代表取締役社長)

 「コスト削減」というと、一般的には「経営が苦しくなってからするもの」「現場が暗くなる」といったネガティブな印象や思い込みがつきまとう。だが、コスト削減の本来の目的はコストの“最適化”である。現場のスタッフに無理を強いたりすることではない。その点をまず心得てほしい。

 最初に行うべきなのは、現場に経営意識を植えつけること。有効な手法としては、経営状態や実際にかかっているコストを開示する、いわゆる「見せる化」が挙げられる。その際、「医院の経営状況が苦しい」と漠然と伝えるのではなく、「患者1人を診ると平均で○円の利益が上がる」とか「1万円利益を上げるためには患者を○人診なければいけない」など、わかりやすい言葉に置き換えて伝えるとよい。その上で、コスト面から業務全体を見直すのである。

 業務の見直しには、まず、普段当たり前に行っていることの妥当性を疑ってかかり、その上で考え直す「rethink」の発想が必要である。スタッフのユニフォームを診療所側でクリーニングに出す必要があるのか、休日に看板の電気をつけておく必要があるのかなど、原点に立ち返って必要性を検討する。

 診療所においてコスト削減の主な対象となるのは、水道光熱費、業務委託費、診療材料費、消耗品費などだ。これらを圧縮する手法は、(1)調達改善、(2)運用改善、(3)設備改善の三つに大別できる。

成果が出たら現場を評価
 (1)は「契約の最適化」である。例えば、清掃業者や警備会社との契約は、価格交渉の甘さゆえに高額になりがちだが、仮に自宅と診療所の2カ所を契約しているのであれば、値下げ交渉をしてしかるべきである。一般企業の中には、清掃業者の業務内容を業者自身だけでなく、現場スタッフにも評価させ、金額に見合った働きをしているかどうか確認し、それを交渉材料に使っている例もある。

 また、医療機関では、伝票、帳票、カルテといった多様な印刷物が使われている。頻繁に少量発注していれば当然割高になるので、年間で計画的に発注したい。なお、この時にも、「そもそもこの伝票は必要なのか」「複写式である必要が本当にあるのか」といった「rethink」の発想が重要である。

 (2)はいわゆる“無駄取り”で、「待合室の照明が明るすぎないか」「不要な照明をつけていないか」とか「空調は最適か」などを見直してみる。自動ドアの開閉速度も改善できるポイントの一つ。電気が流れる量はスピードの3乗に比例して増えるので、開閉速度を遅くすることも一法である。

 また、日の出、日の入り時刻を考慮せず、外看板などの外灯をつける時間を年中同じ時間にセットしているのも無駄。医療機関の水道代の半分はトイレで使われているとの認識も重要で、女性トイレで二度流しをやめてもらうよう張り紙で告知したり、擬音装置を設置したりするのも効果的だ。

 (3)の「設備改善」とは、人感センサーやトイレの節水システムなど設備を導入して“無駄取り”すること。ただしこの際、業者の勧めをうのみにし、言われるがままに取り付けてしまうのではなく、前述の②のように、現場で必要性を慎重に検討した上で採用することが重要である。

 これら(1)~(3)の手法を上手に取り入れて、現場スタッフにも考えさせた上で実際にやらせてみる。コスト削減の成果が出たら、経営者はスタッフの頑張りをきちんと評価する。こうした姿勢は現場のやる気につながり、また、コスト削減活動の継続性を保つ上でも極めて重要である。このような形でコスト削減に取り組めば、経営者と現場の隙間が埋まり、強い組織づくりにもつながるのである。

【まとめ】
・まずは、経営状態を現場スタッフにわかりやすい形で公開する。その上で、「rethink」の発想でコスト面から業務全体を見直してみる。
・コスト削減は「調達改善」「運用改善」「設備改善」の三つの手法で取り組む。ただし、設備を導入する際には事前の慎重な検討が必要。
・成果が出たら、職員を評価する。コスト削減に取り組むことで院長(経営者)と職員(現場)の隙間が埋まり、組織力を成長させるきっかけにもなる。

この記事を読んでいる人におすすめ