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福島・大野病院事件の第5回公判が開催
病理の鑑定結果の信ぴょう性に疑問符

公判後、記者会見する主任弁護人の平岩敬一氏。

 福島県立大野病院事件の第5回公判が5月25日開かれ、患者の死亡直後の病理検査や警察の鑑定などを行った病理医への証人尋問が行われた(事件の概要などは、「福島・大野病院事件の初公判、被告は無罪主張」「医師が刑事裁判の被告になったとき」を参照)。

 本事件の焦点の一つは、子宮前壁に癒着胎盤があり、それを帝王切開手術の前に予測できたか否かにある。病理医は、鑑定でも、この日の証人尋問でも子宮前壁に癒着胎盤があることを認めた。これは一見すると、検察側に有利な証言とも受け取れるが、鑑定とは異なる内容の証言をしたり、胎盤病理の専門家ではない点を弁護側に指摘されるなど、鑑定、さらには証言内容の信ぴょう性に疑問が呈せられる結果となったといえよう。

尋問は7時間にも及ぶ長丁場
 第5回公判は、午前10時に開始し、1時間の休憩をはさんで、終了したのは午後6時近くだった。第2~4回の証人尋問では午前1人、午後1人、合わせて2人の証人尋問が行われてきたのとは異なり、今回の尋問は1人のみだった。それだけ今回の事件で鑑定が重要なカギを握るということだろう。

 本事件は前置胎盤かつ癒着胎盤である女性が、帝王切開手術を受けて大量出血で死亡したというもの。癒着胎盤は非常に稀で、かつ事前の予測が難しい。しかも癒着胎盤は最終的には病理検査で確定する。したがって、この女性が本当に癒着胎盤だったのか、そうであれば部位はどこかなどが焦点だった。

 証人尋問を受けた病理医は、患者死亡直後の2004年12月末に病理検査、2005年6月に富岡警察署(県立大野病院の地元警察署)の依頼を受けた鑑定、さらに今年1月に同鑑定に対する検察からの照会に対する回答をそれぞれまとめている。

 子宮後壁への胎盤の癒着には、検察と弁護側、双方の異論はない。問題なのは、子宮前壁への癒着だ。病理医は、病理検査では「子宮前壁への癒着はない」としていた。鑑定では子宮前壁への癒着を認める内容に変更したものの、その幅については「(胎盤)絨毛の残存部位が非連続であり、計測できない」とした。ところが、検察の照会への回答では、「(病理組織の)プレパラートの一部に癒着が認められれば、その採取部位全体に癒着があると推測した」とし、公判の場で組織写真を図示しながら、その範囲を示した。

 この検察照会への回答について、被告人弁護士の平岩敬一氏は、「写真として提出していない組織部分まで改めて顕微鏡で観察し、癒着部分を同定したというが、それならなぜその写真を提出しないのか。こうした『推測』の仕方が科学的な病理のあり方だといえるのか」と、公判後の記者会見で疑問を呈した。もっとも、仮に子宮前壁の癒着胎盤であったとしても、超音波検査などを行っても術前に診断するのは難しいという。

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