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出産時の死亡例裁判で医師の過失を否定
名古屋の産科医院での刑事事件で無実が確定

 名古屋地裁で2月27日、出産時に女性が出血性ショックと思われる原因で死亡、担当医の桑山産婦人科(名古屋市港区)の桑山知之被告が業務上過失致死罪で起訴された事件の判決があり、罰金50万円の求刑に対し、医師の過失は認められないとし無罪を言い渡した。検察側は控訴期限の3月13日までに控訴せず、医師の無罪が確定した。

 桑山医師の弁護人である中村勝己氏は、「今回の裁判のポイントは、医療の不確実性を裁判所がどう判断するかという点にあった」と説明する。実は、この裁判は当初は書面審理だけで刑を言い渡す略式起訴とされたが、弁護側が正式裁判を請求した経緯がある。「福島県立大野病院の例をはじめ、最近、医療事故が刑事裁判になるケースが目立つが、刑事裁判でどこまで医師の責任を問うことができるのかを審理し、検察側のけん制につながればと考えた」(中村氏)。

「転送で助かったか否か」は証人で意見一致せず
 この事件は、2000年8月31日、当時31歳の女性が破水したため桑山産婦人科に入院、出産した。陣痛を誘発するため、子宮収縮薬を投与、分娩を早めるクリステレル法および吸引分娩法により出産した。しかし、その後に出血を来し、同日夜、出血性ショックと思われる原因で同診療所で死亡した。

 争点は、以下の3点だった。
(1)出血の原因は子宮頸管裂傷であり、それを見落とした過失の有無
(2)出血性ショックによる全身状態を改善するための十分な輸液措置を実行しなかった過失および輸血用血液の手配を怠った過失の有無
(3)高次医療が可能な病院に転送すべき注意義務を怠った過失の有無

 一番の争点になったのが、(3)だ。高次医療機関への転送義務が生じたとされる時点までの出血量は約840mL(そのほかホスピタルマットに含まれる出血もあり)で、それまでの輸液量は約800mLに上った。こうした状況にあって、転送した場合に死亡を回避できた否かは、証言した医師によって意見が異なり、ある麻酔科医は「急速輸血などを行えば、90%の確率で救命できた」と述べた。その一方で、別の救命救急医は、高次医療機関に搬送されても、ショック後のARDS(急性呼吸促迫症候群)や多臓器不全を発症する可能性が高いことなどから、「合理的な疑いを入れない程度に救命が確実であったとは言えない」と証言。結局、専門家の意見は一致せず、判決では「高次医療機関に転送していたとしても、確実に救命できたと認めるには合理的が疑いが残る」とし、医師の過失を否定した。

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