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ピロリ除菌後も油断は禁物
内視鏡フォロー率の低下で癌の発見遅れる

写真1 除菌後に胃癌が発見された症例

 川崎医大健康管理学講師の鎌田智有氏の元を訪れた60歳代の男性。胃潰瘍の既往があり、2000年4月に心窩部痛を訴え来院した。胃体部後壁に潰瘍の再発を認め、酸分泌抑制薬でコントロール。ヘリコバクター・ピロリH.ピロリ)の除菌治療を保険適応後の2001年1月に行った。

 だが、除菌を行った後は来院せず、2年4カ月後に再び心窩部痛を訴え来院した。内視鏡検査を行ったところ、胃潰瘍とは別の部位に2型の進行胃癌が発見された(写真1)。

 「この症例のように、胃潰瘍の患者は除菌して痛みが取れると安心して来なくなってしまうことが多い。その中に癌を発生していても、発見が遅れてしまうケースが散見される」と鎌田氏は頭を悩ませる。

除菌後低くなる経過観察率
 胃潰瘍の治療法として一般的になったH.ピロリの除菌。胃癌予防法としても期待されている一方、最近は鎌田氏のように除菌後の経過観察率の低さを問題視する専門医は少なくない。

 山形県立中央病院内科医長の間部克裕氏も、以前からこの問題を懸念していた一人。「除菌すれば胃癌や胃潰瘍再発のリスクが圧倒的に減ることは間違いないが、完全に予防できるわけではない。特に前癌病変ができている時点で除菌しても、癌の進行を遅らせるだけにすぎない。そもそも、除菌時には内視鏡で見えないような早期癌を見逃してしまうことは十分にある」(間部氏)。
 
 間部氏は、臨床現場での除菌療法の問題点や胃癌抑制効果などを明らかにするため、除菌療法が保険適応となった2000年11月から2003年12月にかけて山形県内の83施設、約4000人のH.ピロリ陽性の消化性潰瘍患者を登録。インフォームドコンセントの上、除菌するか否かを患者に選択してもらい、その後の経過を追跡している(除菌群91.6%、非除菌群8.4%)。

 2006年末に行った中間解析結果では、除菌成功により新規胃癌の発生率は約3分の1に低下し、胃潰瘍の再発率も大幅に抑制できた(観察期間の平均1.6年、最長5.1年)。ただし、除菌群では内視鏡による経過観察率が有意に低いことが分かった(図1)。経過観察が可能だった除菌成功例1932人の中から8人の胃癌が発見された。間部氏は、「除菌群では経過観察率が低いのだから、これらの患者の中に、癌が見逃されているケースがもっとあるだろう」と話す。

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