
写真1 受診時の胸部X線写真(ここをクリックすると別ウインドウに拡大写真が表示されます)
金沢大心肺・総合外科の西田聡氏(現在は東京医大心臓外科講師)の元に、3年ほど前に来院した72歳の女性。主訴は、呼吸困難と、顔面と足の浮腫。頸静脈は著明に拡張し、心拍数は110/分、呼吸数は20/分だった。熱が37.5度あり、血液検査では白血球は正常だったが、CRPが6mg/dLと感染を疑わせる値だった。
浮腫の状態から心不全を疑った西田氏は、すぐに心電図と胸部X線をオーダー。すると心電図では洞頻脈を認め、胸部X線写真では著明な心拡大と両側胸水が観察された(写真1)。「明らかな心不全だった」(西田氏)。
だが、よくよく胸部X線写真を見ると、心影上に細い棒状の影がぼんやり見えた。そこで西田氏は、続けてエコーとX線CTを施行。すると、左室心筋内に金属製の「針」らしきものが存在し、周辺心膜が肥厚していることが明らかになった(写真2)。この時点で改めて患者の胸部を観察したが、特に外傷はなし。本人に何度尋ねても、最近、胸部に痛みを感じたことはなく、「針」に関する心当たりもないとのことだった。