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「急性中毒に胃洗浄」を見直せ
変わる救急診療の“常識”

「胃洗浄は適応を見極めて実施するべき」と話す北里大病院救命救急センターの上條吉人氏。

 古くから、急性薬物中毒患者にルーチンで行われてきた胃洗浄。「胃に残っている物質を洗い流せば患者の予後は改善するだろう」と信じられてきたのだが、近年、その適応を絞る施設が目立つようになってきた。

 胃洗浄の臨床的意義は少ないとする欧米のコンセンサスを受けた変化で、例えば、年間120~150人の急性薬物中毒患者を受け入れている北里大病院救命救急センターでは、かつてはほぼ全例に胃洗浄を行っていたが、現在では年間にわずか数例のみ。

 「胃洗浄を行わなくなって死亡率が高まったということはなく、むしろ合併症が減ったように思う」。同センターで医局長を務める上條吉人氏はこう印象を述べる。

誤嚥性肺炎を有意に誘発
 胃洗浄の適応を見直す大きなきっかけとなったのは、1997年に欧米で出された専門家組織によるステートメントだ。急性中毒治療の標準化を目指し、諸外国の専門家が過去の文献を見直しまとめたもので、胃洗浄によって予後が改善するというエビデンスが一つもないことが判明したのだ。それどころか、胃洗浄により胃内容物の逆流や嘔吐が誘発され、誤嚥性肺炎を来す危険性や、胃管挿入による食道・胃の損傷、挿入の刺激による不整脈や心停止の誘発など、種々の合併症が有意に増加することが明らかになった(表1)。

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