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【米国から学ぶ――医療の質向上を目指して 第18回】
質の計測が報酬にも直結する時代へ

 米国では、膵臓癌手術、食道癌手術など、症例数と成績がある程度相関するというエビデンスが論文になっている手術がある。このため、連載第13回で紹介したリープフロッグ・グループの施設評価では、症例数が重要な項目となっていた。

 ところが、連載第17回で見たように、米国外科学会(American College of Surgeon;ACS)が実施する「全米外科手術の質向上プログラム」(National Surgical Quality Improvement Program;NSQIP)と呼ばれるベンチマーキング(成績比較)は、「手術件数と成績は必ずしも相関せず」という立場。全体として相関関係があったとしても、個別施設をそれで評価するのは危険であるとし、患者の背景因子でリスク調整を行ったアウトカム指標で比較すべきと考える。

 そしてACSは「NSQIPに参加することは各施設の採算性向上に効果がある」と、学会内での広報を積極的に行っている。確かに、各施設にとってNSQIPに参加することには労力も費用もかかる。NSQIP開始に必要なコストは、ACSに支払う参加費3万5000ドルと、データの収集を行う看護師1人を雇う給与が必要で、合計10万ドル近くに上る。

 しかし、NSQIPに参加すれば、有害事象や避け得る患者死亡を減らせる可能性が高い。ASCのNSQIPの牽引役を果たしてきたシュクーリ・クーリ氏らの分析によれば、呼吸器関連有害事象が1件発生すると病院には5万2500ドルの追加費用が発生することから、「NSQIP開始費用は合併症2例を抑止するだけでペイするが、合併症減少効果はそれ以上見込める」という。

 こうした投資効果の説明と、参加施設向けのNSQIP導入相談窓口や、データ収集看護師への研修なども提供し、ACSはNSQIP推進に力を入れる。

 連邦政府のメディケア(高齢者向けの医療保険)が推進中のP4P(Pay for Performance、医療の質に応じた診療報酬払い)において、NSQIPも大きな役割を果たすと予想される。連邦政府の公的医療保険部門(Centers for Medicare & Medicaid Services;CMS)は、2005年8月に「手術の質向上プログラム」(Surgical Complications Improvement Program)を開始し、術前の抗菌薬の投与、全身麻酔の前のβブロッカーの投与などの標準的治療プロセス順守率を、医療機関別に計測し始めた。

 今、こうしたプロセスの順守率とNSQIPが計測しているアウトカムが連関するのかどうかが注目されている。さらには、NSQIPが計測するアウトカム成績がCMSのP4Pの尺度の一つになる可能性もある。米国では、質を計測することが診療報酬にも直結する時代が近づいている。

日本の「手術件数と質の議論」への教訓
 日本では、7月31日に第1回「診療報酬調査専門組織 手術に係る施設基準等調査分科会」が開催された。

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