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【未承認薬、何が問題か 第5回】
欧米4カ国に追い付け!

 海外では承認されていても日本では未承認の薬を個人輸入で使用することは、日本人の臨床データが少ないことに加えて、患者自身の経済的負担が大きいことや、副作用による被害が起きても救済が受けられないことなど、患者にとって負担が大きい。

 そのため厚生労働省は2005年1月に「未承認薬使用問題検討会議」(以下、検討会議と略、現在の座長は国立病院機構名古屋医療センター院長の堀田知光氏)を設置し、国の新薬承認の基本的考え方は維持しつつ、臨床現場で必要とされる未承認薬を早期に使用できるための新たな枠組みを作った。2006年7月28日に開かれた第9回検討会議では、前回紹介した乳癌患者、小椋すみれ氏も個人輸入していたソラフェニブ(米国での商品名:Nexavar)が議題に上った。ソラフェニブは最近承認申請が行われたばかりだが、迅速な審査が望まれるという方針が確認された。やはり小椋氏が個人輸入していたべバシズマブ、ボルテゾミブについても、既に検討会議での議論を経て、現在、承認のための審査中だ。

 検討会議は以下のように進められる。事務局はまず、欧米諸国(米、英、仏、独の4カ国)で新たに承認された薬を定期的にチェックし、適応となる疾患が重篤であるか、既存の療法と比較して医療上の有用性があるか、また学会や患者団体がその薬の早期承認を要望しているかどうかも含めて、3カ月に1度開かれる検討会議に新薬リストを提出する。

 検討会議のメンバーは、新薬リストの中から、さらに詳しく検討すべきものを選別し、下部組織に当たるワーキンググループに検討してもらう。ワーキンググループは、当該新薬の添付文書や文献、学会抄録などを精査した上で、次回の検討会議に報告書を提出する。報告書を基にさらに議論した上で、検討会議としての方針、例えばわが国でも早期に治験を開始すべきとか、既に治験が進行中ならその結果を見守るべき、などを決定する。

 検討会議がこれまで取り扱った新薬とその後の状況は、表1の通り。製薬企業にとっても、国の検討会議が出した方針であることの意味は大きいらしく、新たに治験が開始されるなど、わが国における承認に至る道筋をスピードアップさせる効果があるようだ。

 そのよい例が、第1回の検討会議で取り上げられたサリドマイド。わが国では大日本製薬(当時)が睡眠薬(商品名:イソミン)として1958年から販売を開始、さらに胃腸薬(商品名:プロバンM)としても販売された。しかし、その催奇形性のために大きな薬害をもたらし、1962年に回収されて以後、承認されないまま今日に至っている。

 しかしその後、多発性骨髄腫の治療薬として世界的に再び脚光を浴びるようになり、個人輸入の実態が指摘されてきた。検討会議で「早期に治験が開始されるべき」との方針が出たことを受けて、日本の藤本製薬が開発に乗り出すことになった。現在、承認申請に向けて準備中だ。

 検討会議で取り上げられる新薬は、欧米4カ国(主に米国)で承認済みのものに限られるという限界はある。薬によっては、人種により効き目や副作用の出方に差があるものもあるだろうから、欧米で承認されたからといって、日本でもそのまま承認して良いとも言い切れない。ただ、新薬が「欧米では使われているのに日本では使えない」という状態を少しでも解消するために国が動きだしたことは、評価すべきだろう。

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