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【日経ヘルスケア21 6月号●診療所経営相談室より】
すぐ近くにクリニックモールが開設予定
患者数の減少を避ける方法は?

2006/06/13
日経ヘルスケア21

【質問】
 駅前に開業して10年になりますが、先日、医師会から連絡があり、すぐ近くの大型商業施設にクリニックモールが計画されていると聞きました。モール内にどのような標榜科目の診療所が開業されるのかは不明ですが、当院と同じ科目の診療所が入るとなると、患者の減少が心配です。モール開設の影響を避ける何か良い方法はないでしょうか。
(耳鼻科、50歳)

【回答】
 早めに施設側へ働きかけるべき。
(回答者:田中 徳一=(株)西日本総研シニアマネージャー)

 クリニックモールとは、同一フロア内に科目の異なる複数の診療所を集めた複合型医療施設だ。患者にとっては1カ所で様々な科目の診療を受けられ、開業医にとっても各医院と連携できる利点があるため急増している。
 
 ただ、既存の地域の診療所にとっては、同じ科目の医院がモール内に開業すれば、患者を取られる事態に陥りかねない。これを極力避けるためには、モールの計画を早く察知し、施設側と話し合いを持つことが大切となる。

計画段階なら影響回避も
 モールを計画するに当たって商業施設側は、集患効果を高めるために科目の異なる複数の医院を誘致する。その募集や選定などモール全体の開設準備を担当しているのは、医療機器の卸や薬局、不動産会社などの特定の事業者であるのが一般的だ。

 まず、開設計画を知ったら、こうした業者や建物のオーナーに連絡を取り、同一科目の医院を誘致しないよう交渉したい。まだ計画段階で、入居する診療所が具体的に決まっていなければ、一考してくれる可能性は高い。

 施設側にとっては、モールがすべて埋まり、各医院が繁盛するのが最も好ましいことである。例えば、薬局がプロデュースしているのなら、診療所を流行らせてより多くの処方せんを得たいと考えているはずだ。オーナーも、入居したクリニックが不振に陥って移転してしまい、テナントが空くことだけは避けたいと思っているだろう。

 そこで、同一科目の診療所がモールに入れば自院と競合し、十分な患者を確保できない可能性があることを訴えるのである。交渉の際に地区医師会の理事などに付き添ってもらうと、効果はより大きいだろう。開業を検討している他科の医師を紹介するのも手だ。このような対処をすれば、大半の場合、同一科目の開業を避けられるはずである。

 なお、早期にモールの開設計画を把握するためには、日ごろ自院に出入りしている医薬品卸の担当者などに、情報の提供を頼んでおくとよいだろう。施設側はモールにクリニックを誘致する際、開業を検討している医師の紹介を卸などに依頼するケースが少なくないからだ。

既に契約済なら腹をくくる
 対応がやっかいなのは、モールの開設を知った時点で既に特定の診療所の開業が決まっているケースである。

 すべて他科のクリニックであれば、逆に診々連携を図れるメリットがある。だが、同一科目の診療所が契約を済ませていれば、業者に働きかけても覆すことは難しいだろう。

 この場合は、早めにあきらめて腹をくくるしかない。モールの診療所よりも先に開業している利点を最大限に生かし、地域住民に再度、自院の特徴をアピールするのだ。

 診察中の説明をより丁寧に行い、診療情報の提供・開示を積極的に進めるほか、職員の接遇の向上を図るといった様々な対策が考えられる。自院の問題点を明確にするために患者アンケートを実施し、その結果を院内に掲示するとともにサービスの改善に生かすのもよいだろう。競合医院に負けないサービスを確立する絶好のチャンスととらえ、前向きに取り組みたい。

【まとめ】
・入居する診療所が未定なら、商業施設側に同一科目の医院の誘致を避けてもらうように交渉する。
・業者との交渉の際は、自院との競合によりモールのクリニックもスムーズな患者獲得が難しくなることを訴える。
・既に同一科目の診療所の入居が決まっている場合は早めに腹をくくり、自院のサービスの質の向上に取り組むべき。

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