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ACE阻害薬の副作用を逆手に取る
咳の反応を敏感にして誤嚥性肺炎肺炎を予防

「肺炎や脳卒中の既往歴がある高齢の患者すべてに誤嚥性肺炎の予防対策を考慮している」と話す東北大の大類孝氏

 アンジオテンシン変換酵素阻害薬ACE阻害薬)は空咳副作用が問題になることがあるが、これを逆手に取って、誤嚥性肺炎を予防する試みが広がっている。

 誤嚥性肺炎は、咳反応や嚥下反射が低下することで、気が付かないうちに口腔内の雑菌を唾液とともに気管や肺に吸引することにより発症する。患者は高齢者がほとんど。繰り返し罹患する上、重症化することも少なくない。そこで、ACE阻害薬の副作用を利用して、喉の反応を敏感にして誤嚥性肺炎を予防しようというのがこの試みだ。

 「当院では、肺炎や脳卒中の既往歴がある高齢の患者すべてに誤嚥性肺炎の予防対策を考慮している」と話すのは、東北大老年科助教授の大類孝氏。特に、肺炎を繰り返す高齢者や、脳卒中で大脳基底核に障害がある患者は、ハイリスク患者として積極的な予防対策を取るべきだという。 

 愛媛大第2内科教授の檜垣實男氏も、「高血圧に加えて他の慢性疾患の高齢者なども対象になるだろう。見るからに弱っている患者、寝たきりの患者にも効果が見込める」と話す。さらに家族への問診も重要な判断材料だ。「食事を飲み込むのが遅い」、「しょっちゅうむせている」などの場合も予防対策の対象となる。

使いやすいのはACE阻害薬
 ACE阻害薬の誤嚥性肺炎の予防投与は、保険で認められているわけではない。しかし、大類氏は「高齢者の多くは高血圧で、既に降圧薬を使用している。降圧薬をACE阻害薬に変更するだけなので、臨床応用しやすいのではないか」と語る。

 では、実際の効果はどれくらいのものなのだろうか。大類氏は、脳血管障害を伴う高血圧の高齢者1350人を対象に、一方の群にはACE阻害薬を、他方にはCa拮抗薬や利尿薬を投与して、その後の肺炎の発症率を見た。その結果、ACE阻害薬投与群では、3年間で肺炎罹患率が約3分の1に抑制された。ACE阻害薬非投与群では920人中79人(8.3~8.8%)が肺炎を発症したが、ACE阻害薬投与群では430人中12人(2.8%)の発症にとどまった(図1)。

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