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【マイナス3.16%の深層 第6回】
長いトンネル抜けたCT・MRIの落とし穴

性能別評価で、上位機種の導入が進むだろう。

 「全体がマイナス改定の中、画像診断については質に応じて格差を設ける方向に一歩踏み出した」――。4月8日、横浜市で開催された第65回日本医学放射線学会のシンポジウムで、厚生労働省保険局医療課の担当官は胸を張った。

 近年の診療報酬改定で、目の敵にされてきた感があるX線CTやMRI。特にMRIの点数は、ここ10年間でほぼ半分にまで引き下げられた。2002年の改定では一挙に3割程度ダウンしたため、「MRIショック」という造語まで生まれた。

 それが今改定では、CTはマルチスライス型、MRIは1.5テスラ以上という条件が設けられたものの、従来より高い点数が付いた。現在、日本で稼動しているMRIの3割以上が、CTに至っては少なくとも半分以上は、こうした高性能の機種だとみられる。新しく保険導入されたPET-CTがPETよりも1000点以上高く評価されたことと併せ、「画像診断の“冬の時代”が終わった……」と、「長いトンネル」を抜けたことで胸をなで下ろす関係者は少なくないだろう。

 医学放射線学会でシンポジストを務めた放射線医も、「平均すれば現行点数を維持できたから、最近の改定の中ではましな方だ」と一定の評価はする。性能の低い機種や専門医のいない施設では減額もやむなしとして、厚労省に画像診断の質を考慮した診療報酬設定を要望してきた学会の努力が実ったからだ。

医療費の高騰につながる可能性大
 しかし、そこは厚労省、決して甘くはなかった。今改定では、同じ月に2回以上CTまたはMRIの撮影を行った際の点数の算定方法が厳しくなった。

 従来、例えば、マルチスライスCTで、同一月に同一の部位を2回目以上撮影した場合、2回目以降は頭部600点、躯幹810点、四肢560点(CT・MRI共通)と1回目よりも低い点数しか算定できなかった。今改定で、さらにこの要件が厳しくなり、部位別から性能別に再編成されたことに伴い、条件から「同一の部位」が削除された。点数表をそのまま読めば、今後は同じ月にまず頭部を、次に躯幹を撮影した場合でも、2回目は650点しか算定できなくなる。

 シンポでは、撮影部位として従来の3区分を挙げ、低い点数になるのは「同一月に同一撮影部位を2回以上……」などとする文章を「期待される通達」として学会側のシンポジストが示すなど、診療報酬改定を議論のテーマに掲げた学会の意気込みとユーモア精神が感じられ、おもしろかった。しかし、この月2回以上の撮影規定のために診療現場は大混乱しているというから、放射線科医や診療放射線技師ととっては笑い事ではないのだろう。ちなみに厚労省の担当官は、この「期待される通達」には否定的だった。

 PET-CTの保険導入についても、この担当官は「これまでCTで診断した後でなければ、PETの点数は算定できなかった」と語っている。つまり、最初のCTの撮影が省けると考えての点数設定である点を踏まえると、PET-CTの点数をPETより1000点以上高く設定しても、決して“大盤ぶるまい”ではないのかもしれない。

 医師であれば誰しも、できるだけ性能のいい医療機器を使いたいと思うものだ。それに今回のような診療報酬での後押しが加われば、医療現場で稼動する画像診断機器は、これまで以上のスピードで上位機種へとシフトしていくことは間違いない。その結果、医療費はまた膨らむだろう。

 CTは64列を、MRIは3テスラを、それぞれ導入する医療機関が出始めている時だけに、性能別評価の導入は、長いトンネルの出口ではなく、実は新しいトンネルの入り口なのかもしれない。

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