日経メディカルのロゴ画像

日本版・癌探知犬、探知率はほぼ100%
目指すは「癌センサー」の開発(4/19 訂正)

写真1 癌探知犬「マリーン」(提供:OJPC福祉犬育成協会)

 犬が嗅覚でヒトの癌を見付け出す--。そんな米国での研究論文が、Integrative Cancer Therapies誌の2006年3月号発表された(関連記事)。肺癌では感度、特異性ともに99%、乳癌に関しては感度99%、特異性88%。驚異的な探知成功率だ。

 実は、日本にも「癌探知犬」がいる。OJPC福祉犬育成協会の白浜育成センター(千葉県南房総市)で飼育されているラブラドール・レトリバー約20頭のうちの3頭だ。まだ論文発表も学会発表もなされておらず、科学的な検証は十分ではない段階なので、海外での研究と同列には扱えないものの、訓練を担当している同センター支部長の佐藤悠二氏は「肺癌、乳癌だけでなく、様々な癌で探知が可能なことがわかった」と明かす。

 海外での研究を知って、佐藤氏が犬に癌探知の訓練を始めたのは昨年のこと。呼気を閉じ込めたバッグのにおいをかがせると、それが癌患者由来のものかどうかを判定できるようになった。訓練には同センターで飼育されている10頭以上のラブラドールが挑んだが、結局、探知できるようになったのは3頭のみだったという。

 実際に、探知の様子を見せてもらった。実演してくれたのは3匹の癌探知犬のうちの1匹、黒いラブラドール・レトリバーの「マリーン」(写真)だ。

 今回、探知するのは肺癌患者の呼気を閉じ込めた尿素呼気試験用のバッグ。呼気は、患者の同意を得て医療機関が採取したものだ。バッグの内部はコーティングされており、におい成分が漏れてくるようには見えないのだが、ごく微量のにおいがにじみ出て、それを鋭敏な犬の嗅覚がかぎ取るのだという。

 実験のセットアップを務める別の訓練士が、本物のバッグを佐藤氏から引き取り、空気が入った偽物バッグ2つとともに、青い箱に収めて並べた。箱の上部は網(魚焼き用の普通のもの)でふたがしてあり、中にバッグが入っていることが視認でき、においもかげる状態。4つの箱のうち、どれに「正解」のバッグが入っているかは、人間の鼻や目では区別できない。

 偽物を避けて、本物だけを探知できるか--。佐藤氏が、違うがん患者の呼気を、シリンジでマリーンの鼻の前で放出。癌のにおいを覚え込ませる。マリーンは、やや落ち着きなく、そわそわ。

 探知開始。佐藤氏が、1つ目のバッグの前にマリーンを誘導する。「マリーン、かげ! これか?」と佐藤氏の声が飛ぶ。しかし、マリーンは1つ目の箱に全く反応を示さない。2つ目の箱の前もほとんど素通り。3つ目の箱の前に。「マリーン、これか」と再び佐藤氏の声。するとマリーンが佐藤氏の体の周りをくるくると回り始めた。箱の前に一瞬座るマリーン。「よし、これだな」と佐藤氏。

 実験をセットアップした訓練士が「正解です」と宣言して、探知は終了した。

この記事を読んでいる人におすすめ