日経メディカルのロゴ画像

疑問だらけのノロウイルス感染報道
清山知憲(宮崎県議会議員)

2012/12/29

きよやまとものり氏●2006年東大医学部卒。沖縄県立中部病院にて初期研修修了後、08年米国ベスイスラエル病院内科レジデント。宮崎大第3内科を経て、11年より現職。

 宮崎県内の医療機関でノロウイルス感染症が集団発生し、それを原因とした嘔吐(おうと)による誤嚥性肺炎で70代から80代の高齢の寝たきり患者さん6人が亡くなられました。亡くなられた患者さんとそのご家族に心よりお悔やみを申し上げると同時に、今なお重症の患者さん方の一刻も早い回復を祈っております。

 しかし、この件に関する報道の姿勢には、「またか」とのいらだちを禁じ得ません。院内、地域にかかわらず感染症が集団発生するたびに、「犯人探し」に終始するメディアのスタンスは進歩していないからです。

 曰く、当該医療機関のどこに落ち度があったのか、教科書通りの感染対策は行われていたのか。さらには行政への報告のタイミングは適切だったのか、関係者への説明責任はどうなのか。なかには医療機関の態度を「開き直った」と表現したり、「ずさん」「認識に甘さ」など明確に病院を非難する報道も県への報告直後から見受けられました。

 ですが私は、当該医療機関を必ずしも責める気にはなれません。

避けられない感染性胃腸炎のアウトブレイク
 国立感染症研究所によると、12月3日から12月9日の間の感染性胃腸炎の定点辺り報告数は全国で19.62でした。一方、宮崎県の定点辺り報告数は35.94。これは全国一です。また今回、宮崎県で集団感染が発生した病院は、64床全てが療養病床であり、相当数の患者さんが寝たきりで胃瘻により流動食をとっておられたとのこと。感染性胃腸炎が全国一流行している自治体にある病院で、寝たきりで免疫力の落ちた高齢者を多く抱えているとなれば、ノロウイルス感染症が発生し、重篤化しても不思議ではありません。

 もちろんそれを予見して感染を抑えるための最大限の対策を講じておくべきというのは当然の意見でしょう。

 しかし、今回の舞台となったような中小病院で、常勤の感染症専門医を雇うのは現実的ではなく、ICT(インフェクションコントロールチーム)も常に活動しているわけではありません。確かに限られた人員と資源で最善を尽くせたかどうかについては慎重な検証が必要です。ですが、持ち合わせのリソースを最大限活かして行う「最善」は、「理想」とは異なるのです。

 感染症診療の第一人者、青木眞先生はご自身のブログ「感染症診療の原則」で今回の騒動について下記のように記しておられます。

高齢者は「ノロが原因で死亡」するのではありません。毎日の記事では病院を批判する立場でその因果関係を書きたいようですが、重症化するのはノロだからじゃないです。高齢だからです。
高齢でしかも、自分で動けない食べれない飲めない、吐き出せない、伝えられないからです。
高齢者が多い病棟や施設では、動ける場合でも、認知症があったりして、手洗いや清潔の指示を守ることが難しかったり徘徊してあちこちさわったりとたいへんです。環境汚染は医療者の努力だけでは解決できません保てません。
おむつをはずしてコネコネしたりするひともいます。
そういった、家ではみきれない、急性期病院では長期に受け入れができない高齢者を看ているのは、待遇もよくない、心身ともにきつい介護の現場です。人手もたりてません。
ゼロリスク信仰はかえってシステムを崩壊させるので、病院が「悪い」んじゃね?という議論にもっていくのは逆効果。
もうやめよう、となって廃院になったら困るのは地域の人たちです。
仮に、絶対に感染させるなというなら、「24時間観察・お世話する人」を特定患者限定で準備するしかありません。
そうご提案ください。そして言うからにはその費用も責任をもって確保できるよう動いてください。
それなりの投資が必要ということです。

(原文ママ)

この記事を読んでいる人におすすめ