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国内にもあるワクチンギャップ(その1)
なぜ、入院しているとワクチンが自費に?
堀越裕歩(東京都立小児総合医療センター感染症科)

2012/01/18

ほりこしゆうほ氏○2001年昭和大卒。沖縄県立中部病院、国立成育医療センター(当時)などを経て、08年7月カナダ・トロント小児病院にクリニカルフェローとして留学。10年8月から現職。

 「なぜ、入院しているとワクチンが自費になるのですか? 差別じゃないですか。うちの子は重い病気をもって生まれてきているから、守ってあげなければいけないのに…」

 重度の疾患で入院している小児の親御さんから、こう責められることがよくある。というのも、自宅(住民票所在地)と異なる市町村の病院に入院する小児では、入院中にワクチンを接種する場合に接種費用の助成を受けられないということが珍しくないからだ。

 後述する現行の行政システムの未整備によって助成が受けられない場合、インフルエンザ菌b型Hib)ワクチンや肺炎球菌7価ワクチンを接種すると、費用はそれぞれ7000~1万円程度。全額を自己負担しなければならないとなると、ご家族にワクチンを勧めても躊躇されてしまうことが多い。

国際ギャップは緩和されても、国内のギャップが顕在化
 もっとも、この「ワクチン任意接種の広域化」という問題は比較的最近出てきた問題である。ほとんどの先進国で標準となっているワクチンの多くが日本国内では接種できない、いわゆる国際的なワクチンギャップという状況が長年続いてきたからだ。そういったワクチンの一部が近年になってようやく承認されてきたが、いまだに任意接種の扱いで、多くの自治体は費用の一部を補助しているに過ぎないのが現状である。

 重度の先天性心疾患などの基礎疾患を抱えていて乳児期に長期入院が必要なことや、低体重で生まれて大きくなるまで何か月も新生児集中治療室(NICU)に入院することがある。現在、日本小児科学会が推奨する乳幼児早期のワクチンスケジュールは過密になってきていて、このような病児たちにも、入院中からでも効率よく(急性期の期間を避けつつ)ワクチン接種を進めていかなければならない。

 東京都立小児総合医療センターは560床の小児病院として2010年に開院以来、多くの基礎疾患を抱える小児のケアに当たっているが、ワクチンで予防可能な疾患(Vaccine Preventable DiseasesVPDs)を合併して重症化してしまう例がたびたび見られる。長期入院児におけるワクチン接種の遅れという明確な原因があるだけに、たとえ入院中でもワクチン接種を適切に実施することの重要性をしばしば痛感する。

居住自治体以外での任意接種には、自治体からの依頼状が必要
 このような基礎疾患を抱える小児は通常、地域の基幹病院や大学病院、小児病院など“広域の医療圏”をカバーしている病院に入院する。そこでワクチン接種の助成を受けようとするときに「ワクチン接種の広域化」問題に直面するのだ。

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