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6月18日閣議決定の正しい読み方
「保険外併用療養の範囲拡大」はごく限定的にとどまる
二木 立(日本福祉大学教授・副学長)

2010/07/20

 6月8日に成立した菅直人内閣は、6月18日に「規制・制度改革に係る対処方針」を閣議決定しました。その「ライフイノベーション分野」の「規制改革事項」のトップは「保険外併用療養の範囲拡大」であり、「現在の先進医療制度よりも手続きが柔軟かつ迅速な新たな仕組みを検討し、結論を得る」とされました。これは、6月15日に内閣府行政刷新会議の規制・制度改革に関する分科会が発表した「規制・制度改革に関する分科会第一次報告書」の内容をそのまま追認したものです。

 菅内閣は同じ6月18日に「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ~」も閣議決定し、「経済成長に特に貢献度が高いと考えられる21の施策」を「国家戦略プロジェクト」に選定しましたが、「ライフ・イノベーションにおける国家戦略プロジェクト」のトップに「医療の実用化促進のための医療機関の選定制度等」が挙げられ、「患者保護、最新医療の知見保持の観点で選定した医療機関において、先進医療の評価・確認手続きを簡素化する」等、上記「対処方針」よりも一歩踏み込んだ記載がなされました。

 閣議決定の報道・解説記事を読んだ医療団体や患者・市民団体の方々からは、「今後混合診療が急速に拡大するのでは?」、「今回の閣議決定は混合診療全面解禁の前触れでは?」との不安が出されています。しかし、閣議決定をていねいに読むと、それは杞憂であり、今後も、「保険外併用療養の範囲拡大」はごく限定的にとどまることが分かります。以下、私がこう判断する3つの理由を書きます。最後に、「保険適用の迅速化」が含まれない今回の閣議決定は、民主党が昨年8月に発表した総選挙公約に違反することを指摘します。

「混合診療」という用語が完全に消失
 私が、今後も、「保険外併用療養の範囲拡大」はごく限定的にとどまると判断する第一の理由は、上述した2つの閣議決定では「混合診療」という用語が完全に消失しており、これは「混合診療原則解禁」が事実上否定されたことを意味するからです。

 実は、規制・制度改革に関する分科会の第1回会議(3月29日)で示されたライフイノベーションWGの「検討テーマ」では「保険外併用療養(いわゆる「混合診療」)の原則解禁」と記載されていましたし、ライフイノベーションWGの第1回会議(4月5日)、第2回会議(4月14日)、第3回会議(4月21日)でも、松井道夫、阿曽沼元博、土屋了介の3委員らが、混合診療原則・全面解禁論(以下、原則解禁論)を正面から主張していました(「議事概要」より。以下、同じ)。

 ところが、第4回会議(4月29日)では、事務局が、突然、「保険外併用療養の範囲拡大」に名称を改めることを提案しました。この理由の説明は全く示されませんでしたが、委員からも特に異論はなく、了承されました。上述したように、「対処方針」では「現在の先進医療制度よりも手続きが柔軟かつ迅速な新たな仕組みを検討」することとされていますが、これは評価療養制度に代わる「新たな仕組み」ではなく、同制度の枠内での「新たな仕組みを検討する」こと、つまり混合診療原則解禁の否定を意味するのです。

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