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発達障害の概念が精神科医療を変える
清水誠(横浜カメリアホスピタル〔横浜市〕・児童精神科医)(2010.7.1訂正)

2010/07/01

しみず まこと氏○2001年奈良県立医科大学卒業。国立成育医療センターこころの診療部、東京都立豊島病院神経科などを経て、2008年より現職。著書に『精神科セカンドオピニオン2―発達障害への気づきが診断と治療を変える』(シーニュ、共著)、『子どもの身体表現性障害と摂食障害 (子どもの心の診療シリーズ 3) 』(中山書店、共著)、『ケーススタディ こどものこころ』(日本医事新報社、共著)。

 「発達障害」はもともと児童精神医学における概念であったが、ここ数年は「大人の発達障害」、その中でも知的な遅れを伴わない高機能の広汎性発達障害が注目されるようになってきた(以下、「発達障害」は高機能の広汎性発達障害のことを指す)。

 発達障害の典型例であるアスペルガー症候群は、知的な遅れを伴わず、むしろ学業成績が優秀だったり、芸術的才能を発揮したりする人もいる。そのため、多くの場合は、ただ「少し変わっている」と思われる程度で、その特性(発達の凸凹)に気付かれないまま成長しているケースがある。しかし、次第に本人の特性が理解されない環境の中で生きづらくなり、自己評価の低下から2次的に精神障害を発症し(2次障害)、大人になって初めて精神科を受診するケースが増えている。

発達障害は今やcommon disease
 アスペルガー症候群が初めて国際的な診断基準に取り上げられたのは、1992年に出版されたICD-10であった。医療や教育、福祉分野の現場レベルで話題に上がるようになったのは、ここ10年のことである。つまり発達障害は比較的新しい概念であるため、児童精神科医の中に発達障害を診ることができる人はいても、成人精神科医で発達障害を診ることができる人はまだほとんどいないのが現状だといえる。

 その一方で、アスペルガー症候群、自閉症、特定不能の広汎性発達障害を含む広い概念である「自閉症スペクトラム」の有病率は、最近の疫学調査によると、アメリカ1.16%[1]、イギリス1.11%[2]であり、発達障害は今やcommon diseaseになっている。

 発達障害に詳しい児童精神科医は、殺到する子どもの発達障害に対応するだけで精一杯であり、なかなか成人の発達障害者まで手が回らない。それは研究についても同様で、成人になって初めて発達障害と診断された人たちの理解はあまり進んでいないのが現状だ。

 発達障害を診断するに当たっては、本人の生育歴を聴取することが欠かせない。ところが、成人の精神科臨床では患者の生育歴を聴取する習慣がないため、発達障害がベースにあることが見過ごされることがままある。

 ただし、発達障害といっても定型発達に近いケースから、非常に重いケースまでの連続体(スペクトラム)であることから、診断名の告知も含めて、どのような支援が最良かは個々人により異なっている。

発達障害が統合失調症と誤診されている
 さらに問題なのは、発達障害が統合失調症と誤診されることである。実際に、この誤診は頻繁に起こっているようだ。

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