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2010年診療報酬改定報道の3つの盲点
二木 立(日本福祉大学教授・副学長)(2010.2.3補注)

2010/01/27

 本年の診療報酬改定をめぐって、昨年11~12月に民主党政権内、厚生労働省と財務省との間で激しい攻防が繰り広げられましたが、12月23日、厚労相、財務相などの閣僚決着により、「全体(ネット)改定率」はプラス0.19%(700億円増)、「診療報酬改定(本体)」はプラス1.55%(5700億円増)で決着しました。

 閣僚折衝後の記者会見で、長妻昭厚生労働大臣は「10年ぶりのプラス改定」を強調し、翌日の全国紙はそれをそのまま報道しました。私も、2年前の2008年改定が、全体改定率マイナス0.82%、診療報酬本体の改定プラス0.38%だったことと比べれば、一歩前進だと思います。特に、入院医療費4000億円の引き上げは、前回改定(約1500億円、病院勤務医対策)の2.7倍であり、入院医療で顕著な「医療荒廃」の改善の一助になると期待しています。

 他面、今回の診療報酬改定についての報道を見ると、全国紙はもちろん、ほとんどの医療・社会保障専門誌においても、3つの盲点があると感じています。それらは、(1)薬価「隠れ引き下げ」を加えると全体改定率は実質0%であること、(2)プラス改定は政権交代の成果とはいえないこと、(3)医科・歯科の引き上げ率格差は露骨な利益誘導であること―です。以下、順番に説明します。

薬価「隠れ引き下げ」を加えると「全体」引き上げは実質ゼロ%
 厚生労働省の公式発表では、本年の改定は、診療報酬本体の改定プラス1.55%、薬価改定等マイナス1.36%で、両者を合算した全体改定率はプラス0.19%とされています。しかし、この計算からは、公式発表資料の最後に書かれている「なお、別途、後発品置き換え効果の精算を行う」ことによる、薬価の引き下げが除かれています。具体的には、これは「後発品のある先発品の引き下げ」によって捻出される約600億円を、薬価改定の財源から外し、一般財源に回すことを意味します。

 もしこの薬価「隠れ引き下げ」を加えると全体改定はわずかプラス100億円(700億円-600億円)となり、「10年ぶりの引き上げ」ではなく、実質ゼロ改定(厳密に言えば、0.03%引き上げ)になってしまうのです。厚生労働省発表では全体改定率0.19%引き上げに伴う国庫支出の増加は160億円とされていますが、実質的にはわずか23億円になるのです。

 私が最初にこのことに気付いたのは『週刊社会保障』2010年1月11日号のコラム(「記者の耳」)を読んだときでした。当初は半信半疑だったのですが、その後、『日本医事新報』2010年1月9日号の「再診料統一に3パターン」という記事の本文に、「少々込み入った話」として、詳しい経過が書かれており、そのカラクリを理解することができました。ただし、両誌とも、診療報酬改定そのものを報じる記事の本体では、厚生労働省の公式発表数値(プラス0.19%)を用いています。なお、薬価改定に詳しい友人の研究者によると、この薬価「隠れ引き下げ」を最初に、しかももっとも詳しく報道したのは『医薬経済』2010年1月1日号のレポート「雀の涙も出なかった改定率」だそうです。 

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