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政権発足後3カ月間の仮評価
民主党政権の医療改革手法の危うさ
二木 立(日本福祉大学教授・副学長)

2009/12/11

 民主党を中心とする連立政権(以下、民主党政権)が9月16日に発足して早くも3カ月が経過しました。私は民主党の「総選挙マニフェスト」の医療政策を分析したときに、医療費と医師数の大幅増加の数値目標が示されていることを高く評価する一方で、「医療費財源拡大の長期見通しが示されていない」ことを指摘し、「税金の無駄使いの根絶と埋蔵金の活用だけでは、医療費大幅増加の財源が捻出できないことは早晩明らかになる」と予測しました(本サイト8月1日「民主党の医療政策とその実現可能性を読む」、以下「前稿」)。この矛盾は来年度の予算案編成で早くも明らかになり、診療報酬引き上げを求める厚生労働省とそれの引き下げ主張する財務省との攻防が激化しています。

 ただし、この点の帰趨は本稿執筆時点(12月6日)では明らかでないため深入りすることは避け、本稿では、政権発足後明らかになった民主党政権の医療政策の別の問題点を指摘します。それは、医療改革の手法・プロセス(以下、医療改革手法)に大きな問題があること、具体的には民主党の掲げる「政治主導」は乱暴で不透明な政治家および「お友達グループ」主導で、きわめて危ういことです。

「官僚主導から政治主導へ」は的外れ
 その前に、民主党政権の金看板といえる「官僚主導から政治主導へ」・「脱官僚依存」は、少なくとも医療政策に関しては的外れなことを指摘します。なぜなら、医療政策の大枠は自民党政権時代から一貫して「政治主導」だったからです。

 そもそも1980年代前半に開始された日本の医療費・医師数抑制政策は中曽根康弘首相の強いリーダーシップ=「政治主導」によるものでした。小泉政権の時代には、歴代自民党政権とはけた違いに厳しい医療費抑制政策が強行されただけでなく、医療政策史上、初めて医療分野に市場原理を導入する閣議決定がなされましたが、これも小泉純一郎首相による「政治主導」でした。福田・麻生政権では、小泉政権の政策の部分的見直しが行われ、医師数抑制政策の見直しや「社会保障の機能の強化」が閣議決定されましたが、これも大枠では「政治主導」と言えます。

 なお、「政治主導」の元祖は民主党ではなく小泉首相であり、2002年3月に発表された「小泉三原則」で「官僚主導の排除」等が掲げられていました。私は、民主党政権に求められているのは、抽象的な「政治主導」ではなく、「国民の生活第一」の視点から、医療・社会保障を拡充し、しかも手続き民主主義を遵守する「政治主導」だと考えています

民主党幹部とブレーン医師の描く「政治主導」の危うさ
 それに対して、民主党幹部や同党のブレーン医師の描く「政治主導」は、厚生労働省医系技官と日本医師会叩きを主目的とし、しかも「お友達グループ」主導の極めて党派的なもので、危ういと思います。

 この点をもっとも率直に語っている民主党幹部が、仙谷由人議員(現・内閣府特命担当大臣)です(『集中』2009年9月号)。仙谷議員は、医系技官に対して「中途半端な専門家であり、学閥の上でも学部の成績でも一流、超一流の人材は集まっていない」といった低次元の批判を行う一方、「政治主導で、従来の審議会方式ではなくタスクフォースとして政府内に(筆者注:在野の人材を集め検討会を)作り」、「個別テーマごとに組む方式」を主張しています。

 自他共に民主党の医療政策のブレーンと言われている上昌広医師(東大医科学研究所)は、医系技官や日本医師会に対する敵意をより明確にし、「医系技官対民主党の対立」(『メディカル朝日』10月号)を呼号する一方、自民党支持団体は「すべて外される」、日本医師会は唐澤会長を更迭すべきと主張しています(「リスファクス」10月27日)。

 しかし、前稿で指摘したように、民主党「マニフェスト」中の医療提供制度改革方針は、厚生労働省の従来の方針と大半が一致しており、大きな違いは医療安全対策だけとさえいえます。この点を無視して、医系技官や日本医師会バッシングに走る仙谷議員や上医師の手法は不公正で、小泉政権が好んだ「国民注視のなかでアドバルーンを高く掲げ…脱・官僚主導を成功させる手法」とそっくりです(竹中平蔵『政権交代バブル』PHP、2009)。

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