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「加古川事件」判決への安易なブログでの批判は不当
兵庫医療問題研究会

2009/07/20

 兵庫医療問題研究会(代表:泉公一氏)は、2000年に兵庫県弁護士会所属の弁護士の有志によって立ち上げられた研究会(2009年4月現在の会員数は37人)。兵庫医療問題研究会はこのほど、加古川市民病院での医療訴訟の判決に関するインターネット上の議論について、「公正な議論が行われていない」と声明を発表した。これは、研究会に所属する弁護士が担当した事件の判決について、医師を名乗る人物がインターネット上で開設する複数のブログで、裁判所で認定されていない内容があたかも事実のように広まり、判決や医療被害者に対して公正でない議論が行われていることを受けたものだ。私たちの主張とともに、裁判所で認定された事実経緯を紹介している。

 当該事案は患者の遺族が民事訴訟を提起し、2007年4月に神戸地方裁判所で判決が出された。加古川市民病院の救急外来に来院した64歳の男性が急性心筋梗塞を疑われながら、70分もの間、経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行できる医療機関に転送されず、転送前に死亡したという症例だ。判決では医師の転送義務違反による責任を認め、加古川市に約4000万円の損害賠償を認めた。当直医が心電図におけるST波上昇及び症状から、急性心筋梗塞と診断していたことに加えて、比較的若年の下壁の心筋梗塞であり、すぐに治療を行っていれば、救命できたと考えられたことから、PCI実施可能な医療機関への速やかな転送が必要だったのに、それが行われなかったと判断されたものである。

「70分間転送先を探していた」事実はない
 裁判の争点は、なぜ70分もの間、当該患者をPCIを施行できる病院に転送しなかったのか、ということだった。病院側は「転送先を探さなかった」ことを認め、「血液検査の結果が出るまでは転送しないというのが地域のローカルルールだった」と主張した。だが、裁判所が転送対象となる地域の2病院に対して事実の有無を確認したところ、そのようなルールがあったことは認められず、判決は血液検査の結果が出ていなかったことは転送を要請する障害にはならなかったと判断した。

 この判決に対しては、判決に関する報道後すぐに「医師として全力を尽くしても転送義務違反とされるとは、救急医療を崩壊させる気か」などと複数の匿名のブログでの発言が相次いだ。争点となった70分間、医師は懸命に転送先を探したが、転送を断られ、結果として受け入れ先が見つからなかったに過ぎないにもかかわらず、裁判所が転送義務違反を認めたと認識されていたようだ。中には“内部情報”として「当直医は、70分間の間に5つの周辺病院に転送要請を行ったが次々に断られた。そこでもう一度2回目の転送要請をかけたところ、1件目に受け入れを了承してもらった。転送準備をしているところで急変した」と記載しているブログもあった。

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