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財政制度等審議会「建議」の医療改革方針を読む(2009.6.11訂正)
開業医から病院への報酬配分の見直し論は皮相
二木 立(日本福祉大学教授)

2009/06/09

 財政制度等審議会は6月3日に建議「平成22年度予算編成の基本的考え方について」(以下、今年の「建議」または「建議」)を取りまとめました。「建議」は、財政再建を至上命題としている財務省による、毎年6月下旬に閣議決定される「骨太の方針」に対する「最大限要求」と言えますが、「骨太の方針」と異なり政府に対する拘束力はなく、しかも毎年の「骨太の方針」決定後は「死文書」化します。

 しかし、今年の「建議」の医療改革方針は8頁におよぶ長大なものであり、しかも「社会保障の機能の強化」という麻生政権の基本方針に逆行するどころか、小泉政権の医療制度改革についての閣議決定(2003年3月)にすら反する時代錯誤的な方針が書かれています。その上、厚生労働省の各種審議会・委員会の報告にはない、診療報酬抑制の新たな手法も含まれています。そこで、「建議」中の医療改革方針を取り上げることにしました。

混合診療解禁論の復活は閣議決定違反
 今年の「建議」の議論の途中では、「骨太の方針2006」の社会保障費抑制目標が見直される可能性も取りざたされました。しかし、最終的には、今年の「建議」でも、「『基本方針2006』等でも示されている歳出改革の基本的方向は維持する必要がある」とされ、従来の方針が踏襲されました。

 そのためもあり、「建議」では、医療に関して、保険料や税負担を増やして、公的医療費(医療給費費)を大幅に増やす「選択肢」は最初から排除され、逆にそれを抑制するために「私的医療支出(自己負担や民間保険等)を増やす」ため、「混合診療の解禁」と「保険免責制の導入」を柱とするさまざまな方策が示されています。

 この点では、社会保障国民会議「最終報告」(昨年11月)が、医療の効率化を行った場合でも、国民医療費は2025年には「現状投影シナリオ」よりも増えることを初めて認め、そのための「追加的に必要となる公費財源」の規模を明示したこと、および医療費の公費負担割合は将来とも変わらないことを前提にして「医療・介護費用のシミュレーション」を行ったのと対照的です。

 しかも見落とせないことは、「建議」が混合診療解禁と合わせて、「公的医療給付については、…真に必要なものに給付の範囲を重点化する」ことを主張していることです。しかし、この主張は、小泉政権時代の閣議決定(2003年3月)が「社会保障として必要かつ十分な医療を確保しつつ、患者の視点から質が高く最適の医療が効率的に提供されるよう、必要な見直しを進める」と規定したことに反しており、明らかに閣議決定違反です。

私的医療支出の大幅増加は非現実的
 今年の「建議」は、混合診療の解禁や保険免責制の導入の根拠として、日本の「私的医療[自己負担や民間保険等]支出対GDP比が、主要国やOECD平均と比べて大きく下回っており、特に、民間保険等の割合は極めて小さくなっている」ことをあげています。しかし、これは次の3つの理由から、まったく皮相な主張です。

 第1に、患者の自己負担は対GDP比で比較するだけでなく、総医療費に対する割合でも比較すべきであり、日本のこの割合は主要先進国(G7)中最高です。第2に、日本の総医療費中の民間保険等の割合が低い理由の1つは、それに「生命保険大国」である日本の生命保険特約等の事実上の民間医療保険の給付費が含まれていないからです。第3に、民間保険の位置付けは国によってまったく異なり、この比率を単純に国際比較することはできません。日本では民間保険というと個人が保険料をすべて負担する個人保険を連想しがちですが、アメリカやヨーロッパ諸国の民間医療保険には企業・雇用主が保険料をすべて~大半負担するものが少なくありませんし、アメリカではそれが主流です。

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