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「タミフル耐性ウイルス」騒ぎに思うこと
大曲 貴夫(県立静岡がんセンター感染症科部長)

2009/02/16

おおまがり のりお氏
1997年佐賀医科大学卒。聖路加国際病院で研修後、2002年に渡米し、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターにて感染症診療を習得した。2004年から県立静岡がんセンター感染症科医長を務め、2007年から現職

 「タミフル耐性インフルエンザウイルスの出現」の報道を見て、多くの人が「インフルエンザに、タミフルが効かない。だから怖い!」と漠然と恐怖を感じている。しかし、耐性ウイルスの出現が実際の社会に与えるインパクトは何なのか、社会はどう対応をすべきかについては、全く理解されていないように思える。その原因は、問題の本質について系統だった説明がされていないからであろう。

 私なりに今回の問題を整理して考えてみた。

●季節性インフルエンザ対策に対して、「タミフル耐性ウイルス」出現がもたらした問題

1)「飲まなければならない」という暗示が、適正使用を阻害している

 騒がれている現状では、多くの人が忘れてしまっているようだが、インフルエンザは自然治癒する病気だ。健康な人がインフルエンザに罹患した場合に、タミフルを服用することで得られるメリットは、「インフルエンザの諸症状を軽くし、有熱期間を短縮すること」(Efficacy and Safety of the Oral Neuraminidase Inhibitor Oseltamivir in Treating Acute Influenza. JAMA. 2000 Feb 23;283(8):1016-24)である。これは、「タミフル(ほか、抗インフルエンザ薬)を飲まなかったら、死んでしまう」という話ではないのだ。

 日本では、抗インフルエンザ薬を「飲まなければならない」と暗示をかけられている人が非常に多いため、世界的に見てもタミフルの使用量が極めて多くなっている。こうした状況に危機感を持っている医師からは、「抗インフルエンザ薬の適正使用」を訴える声が上がっているが、まだ大きな流れにはなっていない。

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