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子宮頸がん予防のための予算規模について
湯地晃一郎(東大医科学研究所附属病院内科)

2010/08/23

はじめに
 子宮頸がん予防ワクチンに対する国民の関心が高まっている。2010年7月21日には、患者会、学会、専門家、市民団体など23団体が、ワクチンの公費助成を求める要望書を、5万を超える署名と共に長妻厚生労働大臣に提出した[1]。また関東知事会も要望書の提出を行っている[2]。現在全国1747自治体のうち、2都県(東京都・山梨県)126市町村で公費助成制度が制定されている[3]。

 このような社会的な動きを受け、8月4日、5日の第175回国会参議院予算委員会にて、長妻大臣が厚生労働省として子宮頸がん予防ワクチンに対する予算要求を行うと明言した[4]。菅直人総理大臣も、ワクチンにがん検診などを合わせれば予防効果が期待できるので普及策が重要であり前向きに取り組むべきだと述べた[5]。8月16日には厚生労働省が、ワクチン接種助成事業として150億円を平成23年度政府予算に要求することが判明した[6]。しかしながらまだまだ予算配分は流動的である。

 子宮頸がんはワクチン接種と定期検診を85%以上の女性に対して行った場合、ほぼ全女性で子宮頸がんの予防と早期発見が可能である[7,8]。来年から子宮頸がん予防ワクチンの公費補助が行われれば、検診・ワクチンの両輪が普及することで、日本においても子宮頸がんの予防が現実的になるだろう。では、どの程度の額の予算規模が必要なのであろうか。本稿ではこれを論じる。

検診の予算規模
 まず検診である。検診への予算措置については、政府は平成21年度に乳がんと子宮がんに216億円を計上し、無料クーポンの配布を実施している[9]。対象年齢は、子宮頸がんの場合、20、25、30、35、40歳の年齢(2009年の人口統計[10]によれば、約4000万人)としており、一定の年齢のみである[11]。平成22年度予算案では、76億円が計上されている(地方自治体が半額負担)[12]。

 政府のがん対策推進計画では、2011年までにがん検診率を50%に増加させ、がん死亡率を2015年までに20%減少させるという目標を掲げている。しかしながら、政府が子宮頸がん検診のために予算措置をした際の想定検診率は、厚生労働省の公式な資料は無いものの、地方自治体の公表資料を調査すると25%である[13]。想定予算算出の際には、政府の2011年目標である50%検診率の半分の値を使用していることになる。検診の予算規模は、十分な対象層、金額とはいえないのが現状である。

ワクチンの予算規模
 続いて子宮頸がん予防ワクチンについて、今後議論されるであろう予算規模の試算を行った。試算に必要なのは以下の数値である。

1)推定対象被接種者の人口
2)推定接種率
3)推定公費補助率
4)推定接種費用(ワクチン費用及び医療機関での手技料)

 1)日本産科婦人科学会や、子宮頸がん征圧を目指す専門家会議などが公表している推奨年齢は、11歳~14歳である[14]。これは諸外国の例と同じである。本稿でも11歳~14歳として3学年分を接種対象とし試算した。この年代の人口(女児)は、総務省人口統計では約174.6万人である。

 2)推定接種率であるが、接種率は100%と50%として算定した。日本では、全国の接種率についての情報はまだ公表されていない。報道によると、学校での集団接種を行っている栃木県大田原市では、接種希望者が98%になったとの報道がある[15]。また、全額公費負担をしており、また個別接種体制で接種している市町村(栃木県下野市)での接種率は、約4割弱であり、このままのペースだと下野市での推定接種率は約6割とされている[16]。今時点での正確なワクチン接種率推定は困難であるため、今回は接種率は100%と50%について試算した。

 ちなみに、英国での2008年~2009年の1年間のデータでは約88%となっている[17]。英国では希望者は無料でワクチンを接種でき、また集団接種という接種方法のためかなり高い接種率となっている。その他、先進約30カ国でも無料、もしくは無料に近い金額でワクチンの接種ができるが、保険制度で償還している国や、集団接種を行っていない国では、接種率は75%程度に留まっている。

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