日経メディカルのロゴ画像

「未承認薬・適応外薬検討会議」をガス抜きに終わらせるな!
勝俣範之(国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科医長)

2010/07/20

 「医療上の必要性の高い未承認薬適応外薬検討会議」の審議が進んでいる。今回、各学会、患者団体などから要望され検討にあがっている薬剤は未承認薬89品目、適応外薬285品目、合計374品目もある。卵巣がんに対するジェムザールは治験ではなく、「公知申請」になる予定と聞いているが、これで適応外薬の根本的問題が解決されたわけではない。今回のこの会議を単なる「ガス抜き会」に終わらせてはいけない。

適応外薬に対する根深い問題
 そもそも、未承認薬・適応外薬の問題は古くから存在し、抗がん剤領域での適応外薬がかなりたまってきた結果、社会的にも問題になってきたため、平成16年(2004年)に厚生労働省内に、「抗がん剤併用療法委員会」が設置され、19の抗がん剤が公知申請によって承認された(抗がん剤併用療法に関する報告書について)。

 この「抗がん剤併用療法委員会」の成果から、今後このような会が継続的に行われ、がん治療の進歩に対応して、タイムリーに抗がん剤が承認されるようなしくみになると期待されたが、「抗がん剤併用療法委員会」はこの年の1回のみで消滅してしまった。以後、適応外薬に対する施策は何ら講じることがなかったので、2004年の「抗がん剤併用療法委員会」から6年を経て、相当数のドラッグラグが生じるという結果になった。

 今回の「未承認薬・適応外薬検討会議」の内容は、適応外薬を企業に新たに治験をさせるか、「公知申請」にさせるかの選択肢しか考えていないため、「抗がん剤併用療法委員会」と本質は変わらない。今後ドラッグラグが生じないようにするための根本的解決策を講じるようにしないといつまで経ってもドラッグラグは解決しない。

薬事承認と保険と切り分けるべし
 適応外薬問題を根本的に解決するには、薬事承認保険適応とを切り分けることが必要である。薬事承認と保険適応を一緒にしているのは、世界でも日本のみである。これが適応外薬のドラッグラグの根本原因になっている。

 「二課長通知」による「公知申請」で行う承認申請方法(※MRIC vol 35「年間70台しか通行できない高速道路に300台がつっこんでくるとどうなる!?」、臨時 vol 344「クスリの審査を『科学』する」参照)は、治験をせずとも公知なエビデンスがあれば承認を認める、というしくみであるが、企業が申請し(申請料1000万円と聞く)、PMDA(医薬品総合機構)の審査・厚生労働省の承認が必要であることになっており、手続きが複雑な上に時間がかかる(結局半年~数年承認までかかる)ので、最新のエビデンスを、タイムリーに医療現場・患者にもたらすようなシステムではないため限界があると言える。

 根本的解決には、簡単に言うと、一定のエビデンスがある薬剤を、薬事承認なしに、保険局が認め、保険適応にするしくみの構築が必要である。

海外での適応外使用の実際
 海外では薬事承認と保険適応は別にしており、一度FDA(米国食品医薬品局)、EMEA(欧州医薬品審査庁)で承認された薬剤の適応外使用での保険適応は、世界各国では形すら違いはあれ、医学の進歩に合わせて、新しいエビデンスが出た時点で順次保険適応となるしくみが確立されている。

 例えば、卵巣がんに対するパクリタキセルという抗がん剤は3週に1回の投与方法として、承認・保険適応になっている治療方法である。3週に1度の投与方法と週1度(毎週)の投与方法とを比較した臨床試験(治験ではなく医師主導の臨床試験)を日本の多施設共同試験として行い、週1度の投与方法が生存率を向上させた結果を発表した(Lancet 2009; 374: 1331-38)。パクリタキセル週1度投与方法は、世界のどこの国でも薬事承認はされていないが、この日本の臨床試験の結果をもって、ほとんどの国で保険償還可能となっている現状にある。

 先日、国際シンポジウムのために来日した英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン腫瘍内科教授のジョナサン・レダーマン氏と話す機会があったが、英国では、「NICE(英国立医療技術評価機構)では承認していないが、臨床試験での使用は正式に認めているし、各医療機関での使用は、Lancetの論文があるから、と言うと保険適応になる」とのことであった。

この記事を読んでいる人におすすめ