日経メディカルのロゴ画像

医師より製薬メーカーに優しい日本の医療制度
多田智裕(武蔵浦和メディカルセンターただともひろ胃腸科肛門科)

2010/06/03

 ※この記事は世界を知り、日本を知るグローバルメディア日本ビジネスプレス(JBpress)からの転載です。

 今年の保険点数改正のポイントの1つであった、「明細付き領収証」発行の義務化から1カ月半が経過しました。

 このレセプト並みに詳しい領収書について、実施後のアンケート調査で半数近くの患者さんが「不必要」と回答しています。当院でも、「前のままでいいのに、なんでこんな複雑になったの?」と言われることがしょっちゅうあります。一方、「診療内容が細かく分かって助かる」という声は皆無です(関連記事:2010.3.1「誰が読む?気が遠くなるほど詳細な領収書」も参照ください)。長妻昭厚生労働大臣は、将来、消費税増税などの議論をする時のためにも、医療費の中身を透明にして、お金の流れを見えやすくしておくことが必要、との考えです。

 しかし、希望者だけではなく、すべての受診者に細かい明細を渡してチェックさせるのは、いわば全員に医療を疑うことを勧めているようなものです。現場の医師にとっては、信頼関係を築く上で障害になることはあっても、メリットはほとんどありません。その上、明細発行はお金の流れを見えやすくするどころか、医療費全体のお金の流れをかえって見えにくくしている気がしてならないのです。

医師の「診察料」は、薬剤師の「調剤技術料」よりも安い
 多くの人は明細付き領収書をもらっても、項目名を見て、自分が受けた検査や処置内容と一致しているかどうかを確認するだけで終わってしまうことでしょう。

 しかし、明細が発行されたらぜひ見比べてほしい項目があります。それは「診察料」と「調剤技術料」の部分です。診療報酬体系が極めて複雑なこともあり、ケースバイケースになるのですが、一例を挙げてみましょう。

 問診と診察を受けて、胃腸の動きを整える2種類の薬を1カ月分処方されたとします。医療機関の「診察料」は1210円(再診料が690円+外来管理加算520円)です。処方箋代金680円を加えても、合計金額は1890円です。

 一方、その処方せんを扱う調剤薬局の「調剤技術料」(薬代金は除く)は2570円になります。患者に問診して、診察して、処方を決める医師の診察料の方が、薬を詰めて説明をする薬剤師の技術料よりも、安い金額に設定されているのです。

 ここで「薬剤師の調剤技術料が高い」と批判したいわけでは全くありません。薬剤師も医師と同じく6年制の学校を卒業する必要がありますし、資格試験もあります。そんなことよりも問題は、医師の技術料が極めて安く設定されすぎているということです。

医師には厳しく、医療周辺産業に優しい保険点数
 診療報酬にまつわるアンバランスの問題は、診察料と調剤技術料の間だけにとどまりません。

 今年、開業医の技術料である「再診料」が20円引き下げられました。その一方で、製薬会社が扱う薬の値段については、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」(以下、「新薬創出加算」)が導入されました。

この記事を読んでいる人におすすめ