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効率偏重の事業仕分けでは見えてこないもの
悪意の「不正請求」を行っている医師なんていない
多田智裕(武蔵浦和メディカルセンターただともひろ胃腸科肛門科)

2010/05/10

 ※この記事は The hottest OPINION site in Japan JBpressからの転載です。

 政府の行政刷新会議による「事業仕分け」第2弾が4月23日に始まりました。

 それに先立つ4月8日、厚生労働省は事業仕分けへの準備として、診療報酬の審査や支払い業務を事実上独占している「社会保険診療報酬支払基金」(支払基金)と「国民健康保険団体連合会」(国保連)のあり方を見直す検討会を発足させました。

 医療費の窓口負担(約3割)以外の診療報酬は、医療機関が月に1回レセプト診療報酬明細)を作成した上で、支払基金と国保連のいずれかの審査支払機関に請求します。これらの審査支払機関は不適切な請求がないかを審査したうえで、医療機関に残りの7割の診療報酬を支払うのです。

 検討会では、この診療報酬の支払い審査業務に伴う「手数料」(審査コスト)の高さが問題とされました。

 また、レセプトを審査して減額させる「減額査定率」は年に0.1~0.2%程度であり、金額にして200億円ほどしかありません。それに対してレセプトの審査料の総額は、1年で800億円に達します。実に減額査定額200億円のために800億円を使用している効率の悪さが問題となりました。

 しかし、医療に従事する側としては金額や効率の問題だけではなく、その背景まで突っ込んで議論してほしいと思うのです。

レセプト審査手数料は本当に高いのか
 まず、レセプトの審査コストは本当に高いのでしょうか。

 レセプトの審査コストは1枚につき約110円です、これに薬局分のレセプト審査コスト(約60円)が加わりますので、合計で約170円のコストが発生します。診療所の場合、レセプト1枚の平均(請求金額の平均)は8000円ほどなので、審査手数料だけで2.2%のコストが発生していることになります。

 国税庁が税金を回収する際に発生する徴税コストは100円あたり1.43円だそうです。つまり、1.43%のコストということです。それと比べると、単なるチェックだけで2%を超えるコストが発生しているのは、高いと捉えられてもやむを得ないのかもしれません。

 しかし4月より義務化された詳細な明細書付き領収証を見たら、そのあまりの難解さから、まさか110円のコストで審査できると思う人はほとんどいないでしょう。多くの人は「数百円はかかる」と思うのではないでしょうか(関連記事:2010.3.1「誰が読む?気が遠くなるほど詳細な領収書」も参照ください)。

 審査コストが高いのは、保険点数制度が1000ページを超える分量で定められていて、あまりにも複雑過ぎるからです。決して、支払い基金や国保連合会の現場の人たちがさぼっているからではないのです。

本当の「不正請求」は限りなくゼロに近い
 次にレセプト審査の減額査定率の問題です。減額査定率が0.1~0.2%というのは効率が悪いと問題にされています。

 しかし、日本の医療従事者は極めて真面目な人たちばかりです。私は個人的には「真の意味での不正請求は限りなくゼロに近い」と思っています。現状で査定されているもののほとんどは「保険請求方法の解釈の違い」によるものなのです。

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